キャリア理論って誰のモノ?⑤ #キャリア的視点 552

こんにちは(^^) キャリアコンサルタントのひだです。今日もテーマは「キャリア理論」です。今日がシリーズ最終になります。

キャリア理論も時代と共に、実際の「人」に即して変化してきました。それは「良し」とされた理論でも上手く展開できない場面に対して補完することから新しいものが生まれてきたあかしだと思うのです。
現代までに提唱されている理論は今日紹介する「ニューキャリア理論(New career stady)」ですが、これからの社会の発展に合わせて、さらに新しい考えが生まれることでしょう。

さぁそれでは、日常に潜むキャリアの種を感じていきましょう。読了時間は7~10分です。今日は長めです^^;

ジャック・ウェルチ

まずは米ゼネラル・エレクトリック(GE)社の当時の社長兼CEOジャック・ウェルチ氏が1990年代初頭に、「自社の目指すべきビジョン」「組織や人材に求めるバリューを象徴」として提唱した【バウンダリレスキャリア】からです。

バウンダリー(boundary)とは「境界」を意味します。バウンダリレスという事は、キャリアの「境界が無い」という事です。どういうことなのでしょうか?

ひとえに言ってしまえば、「会社組織に捕らわれない」「自由にキャリアを描く」という事です。

これまでの日本の雇用に関する現状は「終身雇用制度」に代表される、会社の内で展開されるキャリアでした。転職は「一か所に落ち着いていられない」「やり通すことのできない」などと言われ、経営者から忌避されるものでした。その考えは深く労働者にも浸透して、一度就職した以上定年まで一つの会社で働き続けることが秘匿とされてきた風潮があります。

しかし、このバウンダリレスキャリアでは、それらの会社組織を始めとする「あらゆる境界」を飛び越えてキャリアを形成するのです。

今の世の中は「複業(パラレルキャリア)※」や「ジョブ型雇用制度」などが広がり始め、2人に一人は転職経験を持っています。正にバウンダリレスキャリアの温床が育まれている時代ですね。
(※「副業」はバウンダリレスキャリアには入らないと考えます)

自分自身が描くキャリアプランによって、自分にとって得るものを求めて転職を行う。「不本意な退職」によるネガティブな転職とは明らかに異なります。自身のキャリアアップがその原動力です。
その為には一時的に給与が下がるとか、引っ越しをするとかなんて意に介さないのです。

転職に限った話ではありません。職階を敢えて降りるという人もいます。部長まで昇りつめたのに「やはり現場が良い」と部長職を辞し現場に戻って愉しく仕事をする人もいます。

バウンダリレスとは、対外的にも、内面的にも境界なんてないのでしょうね。

ダグラス・T・ホール

アメリカのボストン大学マネジメントスクールの教授だったダグラス・T・ホール(Douglas.T.Hall)が「プロティアンキャリア」を提唱したのが1976年です。現在から遡ること45年前です。先のバウンダリレスキャリアと並んで「ニューキャリア理論」と言われる最新の理論です。

プロティアンとは、ギリシャ神話に登場する「変幻自在の神:プロテウス」からその名前を取った「変幻自在のキャリア」です。
自分の核となる「アイデンティティ」を確立し、周囲の環境に適応する力「アダプタビリティ」を持って、様々な環境で花開くキャリアです。

  • キャリアは組織ではなく、個人によって管理される。
  • キャリアは生涯を通じた経験・スキル・学習・転機・アイデンティティの変化の連続である。
  • 発達とは「継続的な学習」「自己志向的」「関係的」「チャレンジ」である。
  • 発達とは決して「公式の教育・研修」「再教育・研修」「昇進・昇格」ではない。
  • 成功の決め手は「いかに学ぶか」「エンプロイアビリティ(雇用能力)」「組織内キャリアからの脱却」「全体としての自己」
  • 組織は「挑戦しがいのある仕事」「発達的な人間関係」「情報・その他の発達的資源」を提供する。
  • 目標は「心理的成功」

これまでの伝統的なキャリアは仕事を中心に組織の中で形成されてきたものが、プロティアンキャリアでは個人を主体とし、組織を土壌に大樹を実らせることを謳っているのです。

田中研之輔

現在、法政大学キャリアデザイン学部で教鞭をとっている氏が、2019年に発刊した「プロティアン」によって、ダグラス・ホールのプロティアンが進化しました。氏はホールの提唱したプロティアンキャリアに、「LifeShift」にもある「キャリア資本」という概念を加え、私たちにわかり易くアップデートを行ったのです。

そしてキャリアを学ぶキャリアコンサルタント自身が取り入れているのです。キャリアコンサルタントももちろん人間ですから、自分自身のキャリアを描いていきます。そのキャリアを考える上でとてつもなくしっくりくるのです。

キャリア資本は以下の3つで構成されています。

  • ビジネス資本 … スキル・語学・資格・学歴・職歴などの資本
  • 社会関係資本 … 職場・友人・地域などでの持続的なネットワークによる資本
  • 経済資本 … 金銭・資産・財産・株式・不動産などの経済的な資本

これらの資本をもって私たちは自身の心理的成功の為にキャリア形成を行っていくのです。

新プロティアンキャリアに関して詳しくはぜひ、本を読んでいただき、田中教授(通称タナケン先生)の講義を受けてみてください。これまでの理論家と異なりタナケン先生は現役で活躍されている方です。これからも話を伺う機会はいくらでもあるのですから。

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シリーズ初回に書いたことですが、 キャリアコンサルタントがキャリア理論を学ぶのは、相談者さんのその時その時の悩みに合わせて、有効な展開を処方するためです。数多くあるキャリア理論は基本的にキャリアに悩み、キャリアを形成しようとする全ての人達のためのモノであって、私たちはプロとしてそこに携わる為に学んでいるんです。

ぜひ、個人や組織のキャリアに迷うことがあったら、キャリアコンサルタントにご相談くださいね^^

個人の活性化を組織の活性化に繋げます。

余談ですが、このブログを書くにあたってタナケン先生の事を確認している中で、実は同郷で、高校の後輩だったことが分かりびっくりしています^^;

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