[閑話休題]気持ちの良い人間関係は、相手の『価値観』を知ることから始まる|相手を理解する姿勢とは

数年前、ある方がお話しされていた内容の中に、以下の言葉があります。
その方は、漫画【HUNTER×HUNTER】が大好きで、第1巻54ページにある、主人公ゴンのセリフ、
「その人を知りたければ、その人が何に対して怒りを感じるかを知れ」
HUNTER×HUNTER @富樫義博

を実践している、とのことでした。
私はこの言葉自体には、ある程度納得しています。
怒りという感情は、その人が大切にしているものを傷付けられたときに生まれる感情だからです。
例えば、時間を守らない人に腹が立つ人は、「約束を守ること」を大切にしているのかもしれません。
人を見下す発言に怒りを覚える人は、「人は対等であるべきだ」という価値観を持っているのでしょう。
このあたりは、アンガーコントロールセミナーなどでも話す内容でもありますが、つまり、怒りの奥には、その人が大切にしている価値観があります。
ところが、その方は続けてこう話しました。
「だから、その人を知りたいから、私はわざと怒らせるんです」
私は大きなショックと、とても残念な気持ちになりました。
何故でしょうか?
目次
- 1. 人を知るために、人を傷付ける必要はあるのか
- 2. 多様性とは、見た目の違いではない
- 3. 相手の価値観は「怒らせる」より「語ってもらう」
- 4. 関係性は「理解しようとする姿勢」で育つ
- 5. 他人の価値観を知る一番の方法
- 6. 人材開発・組織開発コンサルタントとしての私のこだわり
1. 人を知るために、人を傷付ける必要はあるのか
確かに、怒りは価値観を映し出します。
しかし、それは結果として見えるのであって、意図的につくり出すものではありません。
相手を知りたいから怒らせる。
その発想は、「相手を理解したい」という目的よりも、「自分が知りたい」という欲求を優先しているだけです。
自分の考えの押し付けでしかなく、悪意のあるハラスメントです。
相手との信頼関係よりも、自分の好奇心を優先する行為とも言えるでしょう。
私は、人材開発や組織開発の仕事をしています。だからなのでしょうか?
良い関係性とは、「相手の本音を引き出すために揺さぶること」ではなく、「相手が安心して本音を話せる場をつくること」から始まるのではないでしょうか。

2. 多様性とは、見た目の違いではない
近年、多様性(ダイバーシティ)という言葉を耳にする機会が増えました。
しかし、多くの場合、年齢や性別、国籍といった「見える違い(表層的多様性)」が注目されます。
私は、それ以上に重要なのが「簡単には理解し合えない違い(深層的多様性)」だと考えています。
深層的多様性とは、一人ひとりが持つ価値観や信念、経験、人生観、仕事観といった、外からは見えない違いです。
そして、人と人とのすれ違いの多くは、この深層的多様性を理解できていないことから生まれます。
怒る人と怒らない人の違いではありません。
何に怒るのか。
なぜ怒るのか。
その背景には、その人だけの人生があります。
3. 相手の価値観は「怒らせる」より「語ってもらう」
では、相手の価値観はどうすれば知ることができるのでしょうか。
怒らせる必要などまったくありません。わざと怒らせるなど、逆効果です。
例えば、
「今までで一番嬉しかった仕事は何ですか。」
「逆に、一番悔しかった経験はありますか。」
「どんな人と一緒に働きたいと思いますか。」
こうした質問を重ねるだけでも、その人が何を大切にしているのかが少しずつ見えてきます。
ある人は「仲間との一体感」と答えるでしょう。
ある人は「成果を出すこと」と答えるかもしれません。
またある人は、「お客様から感謝されること」と話すかもしれません。
そこには、その人らしい価値観が自然と表れています。
相手を傷付けなくても、人は十分に自分自身を語ってくれるのです。

4. 関係性は「理解しようとする姿勢」で育つ
組織開発の現場では、「関係性の質」という言葉をよく使います。
関係性の質が高い組織では、お互いを理解しようとする姿勢があります。
一方で、関係性の質が低い組織では、「決めつけ」や「思い込み」が増えていきます。
相手を理解したいのであれば、試す必要はありません。
評価する必要もありません。
必要なのは、「教えてください」という姿勢だけです。
人は、自分を理解しようとしてくれる人には、少しずつ心を開いていきます。その積み重ねが信頼となり、本当の価値観を知ることにつながるのです。
5. 他人の価値観を知る一番の方法
私は、「その人を知りたければ、その人が何に怒るかを知れ」という言葉そのものは間違っていないと思っています。
しかし、その続きを、「だから怒らせよう」と考えることには、一切賛同できません。今後も賛同しません。
怒りから価値観が見えることは、確かにあります。
でも、それは相手との信頼関係が築かれた結果として見えるものであって、意図的につくり出すものではありません。
そもそもそんな失礼極まりないことをして良いはずがありません。
他人の価値観を知る一番の方法は、相手を試すことではなく、相手に興味を持ち、丁寧に話を聴くことです。
深層的多様性を理解するとは、相手を分析することではありません。
その人の人生に敬意を払い、「あなたは何を大切にしていますか」と問い続けることです。
その姿勢こそが、良い人間関係を築き、多様性を活かせる組織を育てる第一歩なのだと、私は考えています。

6. 人材開発・組織開発コンサルタントとしての私のこだわり
もう一つ、私が大切にしていることがあります。
私は、「何に怒るのか」を知ること以上に、「何に喜びを感じるのか」「何に感動するのか」を知りたいと思っています。
怒りは、その人が守りたい価値観を教えてくれる場面もあります。
一方で、感動や喜びは、その人が目指したい姿や、実現したい未来、大切にしたい生き方を教えてくれます。
例えば、「お客様から『ありがとう』と言われた瞬間が一番嬉しかった」と語る人は、人とのつながりや貢献に価値を置いているのかもしれません。
「難しい仕事をやり遂げたときが忘れられない」と話す人は、成長や達成に喜びを感じる人なのでしょう。
私は、こうした話を聴く時間の方が、相手との距離も縮まり、その人らしさを深く理解できると感じています。
価値観は、怒りの中にも表れます。
しかし、それ以上に、笑顔で夢中になって話している瞬間や、目を輝かせながら語る経験の中にも、自然と表れます。
だから私は、相手を試すような関わり方ではなく、「あなたは何に心が動きますか」と問い掛けられる関係を築いていきたいと思っています。


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