[転職]第3回:「採用できない会社」が増えているのではない ― “人が残らない会社”が増えている

【序章】:人材不足倒産が急増している

近年、「人手不足倒産」という言葉を耳にする機会が急増しました。

実際、株式会社帝国データバンクの調査でも、人手不足を要因とした倒産件数は高水準で推移しています。

例えば、2023年以降の倒産件数は3年連続で過去最多を更新し、2025年には400社を超えています。

400社と聞いて甘く考えないでください。これは2025年の全倒産件数の4.23%に当たります。

何より、一社平均10人の従業員がいたとすれば、4000人が再就職を余儀なくされ、更にその家族の人生にも影響を与えてしまっている事実が隠れています。

特に深刻なのが、中小零細企業です。

大企業のように、
・高待遇
・知名度
・福利厚生
・採用予算
を持っている訳ではないため、一人辞めるだけでも現場への影響が致死的に大きいのです。

しかも、補充が極めて難しい。

結果として、
 →現場が疲弊する。
  →教育余力が消える。
   →管理職が壊れる。
    →そしてまた人が辞める。

そんな悪循環に入っている会社も少なくありません。

しかし、ここで考えなければならないことがあります。本当に問題なのは、「採用できないこと」なのでしょうか。

目次

  1. 【序章】:人材不足倒産が急増している
  2. 【第1章】:「求人を出しても来ない」の正体
  3. 【第2章】:労働者側にも、“選ぶ力”が生まれた
  4. 【第3章】:離職が離職を呼ぶ
  5. 【第4章】:離職者は敵ではない
  6. 【第5章】:これから強い会社とは何か

【第1章】:「求人を出しても来ない」の正体

中小企業の経営者から、「求人を出しても応募が来ない」という声を聞く機会は非常に増えました。

もちろん背景には、様々な要因が考えられます。

経済的に不安定なこの時代、少しでも安定した企業を求めて、新卒は大企業にエントリーする人たちが激増しているとも聞きます。

他にも少子化もそのひとつです。

若年人口そのものが減っている以上、昔と同じ感覚で採用できる訳がありません。

しかも現在、そのハードルは、
・大企業の初任給上昇
・福利厚生競争
・知名度格差
まで広がっています。

正直、中小企業が “ 条件勝負 ” で真正面から戦うのはかなり厳しいのが、共通認識なのではないでしょうか。

要は現代日本では、税制・資本力・知名度の面で、中小零細企業には非常に厳しい構造になっているという話です。

例えば税制に関しては、インボイスが始まって「消費税が払えず倒産」した企業は、人手不足倒産には及ばないまでも、2025年だけで220社を超えています。
※消費税は消費者が支払っている印象が強いかもしれませんが、あれは事業主に支払い義務があります。消費者は税金分の値上げで割を喰らっているだけです。

大企業は採用広告にも莫大な資金を投入できる。
しかし中小企業は、社長自身が現場に入りながら、採用まで抱えているケースも珍しくありません。
大企業の屋台骨として頑張っているのに、立場の弱さから見返りが少なすぎます。

にもかかわらず、「うちは魅力が無いから仕方ない」で終わってしまう会社が多い。

ですが、本当にそこだけでしょうか。

実際には、“入っても、人が残らない”ことの方が、問題になっているケースも少なくありません。

そして厄介なのは、経営者自身が、その現実に気付けていない場合があることです。

画像

【第2章】:労働者側にも、“選ぶ力”が生まれた

昔は、会社の内情は外から見えにくい時代でした。

しかし今は違います。
SNS。
口コミサイト。
レビュー文化。
転職サイトの社員投稿。

現在は、“ 会社の空気 ” そのものが外へ漏れる時代です。

経営者側は「採用広報」を頑張っているつもりでも、求職者側は、その会社の “ 現場の実態 ” を見ています。

・上司との関係性はどうか
・離職率は高くないか
・現場が疲弊していないか
・育成文化があるか
・人を大事にしているか

こうしたものは、私たちの想像以上に見られています。

特に今の若い世代は、「条件」だけでは動きません。
もちろん給料は重要です。
ですが、それだけで長く残る訳ではない。

なぜなら現在は、「この会社で自分の理想の未来を描けるか」が、以前より遥かに重要になっているからです。

そしてここで問題になるのが、“ 経営者と現場の温度差 ” です。

経営者側:「うちはそこまで悪くない」
現場側 :「もう限界だ」

この認識ズレを放置していると、組織は気付かない内に静かに崩れます。

しかも問題なのは、現場が壊れ始めても最初は数字に出にくいことです。
気付いた時には、もう人が残らなくなっている。

これは、今の中小企業で本当に増えている問題です。

画像

【第3章】:離職が離職を呼ぶ

離職は、個人問題では終わりません。

「社会的証明(Social Proof)」という考え方があります。

自分自身の判断に迷ったときや不確実な状況において、「他者の行動や意見」を根拠にして自分の行動を決めてしまう心理的傾向のこと。

社会心理学者/ロバート・チャルディーニ

人は、自分一人で判断しているようで、実際には周囲をかなり見て影響を受けています。

特に職場では、「あの人が辞めるなら…」が非常に大きな波紋を広げてしまいます。

元々モヤモヤしていた時に、
現場を支えていた人。
信頼されていた人。
空気を良くしていた人。
こうした人が辞めると、周囲は考え始めます。

「この会社、本当に大丈夫なのか」
「優秀な人ほど辞めていないか」
「自分も転職を考えた方がいいのではないか」
こうして離職不安は連鎖していきます。

特に中小企業は、一人の離職インパクトが大きいことは、経営者の皆さんならよくわかっていると思います。

一人辞める。
 → 現場負担が増える。
  → 教育余力が消える。
   → 管理職が疲弊する。
    → そして空気が悪くなる。
     → すると、更に人が辞める。

つまり離職問題とは、単に採用問題のきっかけだけではありません。
“ 組織風土の問題 ” が根っこにあるのです。

逆に言えば、良い関係性もまた伝染します。
「この人たちと働きたい」
「ここなら安心して働ける」
そう思える空気は、人を繋ぎ止めます。

だから今後の中小企業に必要なのは、“ 採用テクニック ” だけではありません。
もっと大事なのは、“人が残りたくなる空気 ” をどう作るかです。

画像

【第4章】:離職者は敵ではない

就社制度が全般だった昭和の時代には多かったのですが、令和になった今でも一部の会社では、退職者を “ 裏切り者 ” のように扱う空気があります。

ですが、これはかなり危険です。
なぜなら現在は、“ 辞めた後の関係性 ” まで外に伝わる時代だからです。

しかも、辞める理由は様々です。
・介護
・家庭事情
・配偶者転勤
・価値観変化
・キャリア方向転換
必ずしも、「会社が嫌いだから辞める」とは限りません。

にもかかわらず、「辞める=敵」という感覚で接すると、その空気は現職社員にも伝わります。

「ああ、この会社は辞める人をこう扱うのか」
そう感じた瞬間、人は会社への信頼を失い始めます。

逆に、円満退職できる会社は強い。
なぜなら現在は、
・アルムナイ採用(再雇用)
・リファーラル採用(紹介)
など、“ 辞めた後の繋がり ” が経営資産になる時代だからです。

つまり今後は、
「辞めさせない会社」
ではなく、
“ 辞めた後も関係が切れない会社 ”
が強くなっていきます。

画像

【第5章】:これから強い会社とは何か

ここまで見てくると、現在の採用難の本質が少し見えてきます。

問題は、「人が来ない」だけではありません。
“人が残らない ” ことです。

しかも現在は、数十年先まで続く人口減少が確定しています。(第4回で改めて触れます)
つまりこれからは、「辞めても次を採ればいい」が通用しないのです。

特に中小企業では、その影響が先に来ます。

今後、本当に強い会社とは、“ 残りたいと思われる会社 ” です。
「採れる会社」ではありません。

そして、その土台になるのが、「関係性」です。
・この人たちと一緒に働きたい
・ここで成長したい
・ここなら安心して挑戦できる
そう思える空気がある会社は、簡単には崩れません。

逆に、
・管理だけ強い
・数字だけ追う
・人を消耗品のように扱う
そんな会社は、これから更にますます厳しくなっていきます。

主体性は、管理では生まれません。
「ここで働きたい」
そう思える関係性の中で、初めて育っていくものです。

次回は、「転職前提社会」そのものに潜む矛盾を掘り下げながら、“人が流動化し続ける社会 ” は、本当に持続可能なのか。

少子化時代の雇用の現実について考えていきます。

画像
画像

#採用 , #採用難 , #人手不足 , #人材不足 , #離職防止 , #人材定着 , #組織風土 , #採用戦略 , #中小企業 , #経営者 , #人事 , #組織開発 , #エンゲージメント , #企業文化 , #職場改善 , #マネジメント , #人材育成 , #離職 , #採用活動 , #リファーラル採用,

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA