[転職]第2回:「転職には二種類ある」 ― “キャリア形成”と“逃避”を分けるもの

【序章】:「転職した=主体的」とは限らない

今の時代、転職そのものを否定する空気はかなり減りました。

むしろ、
「転職してキャリアアップ」
「市場価値を高める」
「自分らしい働き方を選ぶ」
そんな言葉が、前向きなものとして扱われています。

確かに、終身雇用が崩れた現在、転職は特別な行為ではなくなりました。実際、「転職前提」でキャリアを考える人も増えています。

しかし、ここで注意しなければならないことがあります。
それは、“転職=主体的”  ではないということです。

転職は、あくまで「手段」です。「選択肢」のひとつに過ぎません。

本当に重要なのは、その転職が、「自分はどう生きたいのか」「どんな働き方をしたいのか」という意思から来ているのか。

それとも、「今の苦痛から逃げたい」だけなのか。

ここを分けて考えないと、本質を見失います。

目次

  1. 【序章】:「転職した=主体的」とは限らない
  2. 【第1章】:主体的転職とは何か
  3. 【第2章】:逃避的転職とは何か
  4. 【第3章】:なぜ転職を繰り返すのか
  5. 【第4章】:「残る」ことも主体性である
  6. 【第5章】:問題は、転職回数ではない

【第1章】:主体的転職とは何か

主体的な転職には、“次の意思”があります。

・単に「今が嫌」では終わらない。
・自分は、これからどう生きたいのか
そこが起点になっています。

例えば、
・もっと成長したい
・新しい挑戦をしたい
・価値観の合う環境で働きたい
・働き方を変えたい
・今の会社では、もう学ぶものが無い
こうした“未来基準”で動いている状態です。

もちろん、現職への不満がゼロな訳ではありません。
ですが、本質は「逃げたい」ではなく、「理想の将来に向かいたい」にあります。

そして、この違いは転職後に大きく表れます。

主体的に転職した人は、新しい環境でも比較的適応しやすい。
なぜなら、「自分で選んだ」という感覚があるからです。

逆に、意思が曖昧なまま転職すると、環境が変わっても不満の対象が変わるだけになりやすい。

会社が悪い。
上司が悪い。
業界が悪い。
もちろん、実際に問題が存在するケースもあります。

しかし、“自分自身と向き合う作業”から逃げたままでは、ただ環境を変えて終わり、だけが繰り返されることになります。

ここで経営者側が見落としやすいのは、「主体的に転職する人」は、決して“仕事から逃げたい人”ではないということです。むしろ逆です。

・成長したい。
・もっと挑戦したい。
・自分の力を発揮したい。
そう考える人ほど、「ここではもう限界だ」と判断した時、静かに会社を去ります。

だから経営者が本当に見るべきなのは、「転職した」という結果ではありません。

“なぜ、その人は未来を自社で描けなくなったのか”
そこなのです。

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【第2章】:逃避的転職とは何か

一方で、転職には“逃避型”も存在します。

特徴はシンプルです。「この会社さえ辞めれば、全て解決する」そう考えている状態です。

先に話をしておきますが、ハラスメント被害を受けて、心身を病むようであれば、すぐにでも転職をするべきです。
ハラスメントに対して何もしない(と被害者が感じる状況)環境からは、すぐにでも逃避するべきだと考えています。

苦しい環境から離れること自体は悪ではありません。
ですが問題は、「何から逃げているのか」が整理されていないケースです。

例えば、
・怒られたくない
・責任を負いたくない
・人間関係が面倒
・失敗したくない
こうした「楽」を求める感情だけで動くと、転職そのものが“目的化”していきます。

すると環境を変えても、また同じ問題にぶつかる。

なぜなら、自分が向き合うべき課題まで、全部「環境のせい」にしているからです。

とはいえ、人には「現状維持バイアス」があります。

変化によって得られる「メリット」よりも、失敗や損失への「恐れ」を大きく感じ、現状のままでいようとする人間の心理傾向。

これは「現在の環境を変えるのは大変だから変えたくない」と考える、誰もが持っている心理的側面です。

その現状維持バイアスを乗り越えてでも現状を変えようとするということは、どういうことなのでしょうか。
それほどまでに、その場に居たくない何かがあるということなのかもしれません。

また、ここで更に経営者にとって難しい問題があります。

時代の変化などの様々な要因も相まって、今の職場では、「厳しく育てる」が極めて難しくなりました。

・少し強く言えばハラスメントを警戒される。
・踏み込めば、「干渉し過ぎ」と言われる。

その結果、多くの管理職が、「深く関わらない方が安全」という方向へ流れていきます。

つまり現在は、“育てる側も、育てられる側も、互いに遠慮して警戒している”  状態なのです。

しかも現代は、社会全体が “ 過剰反応社会 ” になっています。
・少しのクレームで炎上する。
・少しの言葉尻で問題化する。
その結果、人は「本音で関わる」ことを避け始めました。

しかし、本来、人材育成とは面倒なものです。
時には耳の痛い話も必要になる。
時には衝突も起きる。

にもかかわらず、「嫌われないこと」が優先され過ぎると、誰も本気で向き合わなくなる。

そして、その空気の中で、逃避型転職も増えていきます。何故なら「その場にこれ以上居たくないから」です。

ただし、ここは絶対に混同してはいけません。

・ハラスメント
・違法労働
・人格否定
・精神破壊レベルの圧力

この章の冒頭にも書いていますが、こうした危険な環境から離れるのは、“逃げ”ではありません。これは心身を守るための正常な防衛反応です。

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【第3章】:なぜ転職を繰り返すのか

転職回数が増える人には、いくつかのパターンがあります。

もちろん、本当に環境運が悪かったケースもあります。
ですが一方で、「毎回、似た理由で辞めている」ケースも少なくありません。

・上司が嫌
・評価されない
・思っていた仕事と違う
・人間関係が合わない
環境は変わっているのに、悩みが変わらない。

こういう時に重要になるのが、【統制の所在(Locus of Control)】という考え方です。

統制の所在(Locus of Control)
「自分の身に起きた出来事や成果の原因は、どこ(自分の中か、自分の外か)にあると捉えるか」という心理的な認知の傾向。

簡単に言えば、「自分は状況に影響を与えられる」と感じているかどうか、です。

主体的な人は、「自分に変えられる(影響を与えることができる)部分は何か」を考えます。自責思考と言います。

逆に、極端な他責状態になると、「全部会社が悪い」「全部環境のせい」になっていく。

ただし逆に、“自責過剰”も危険です。
「自分が悪い」
「努力不足だ」
だけで抱え込み続けると、今度は心が壊れます。

だから重要なのは、“自分で変えられる範囲”を冷静に見極めることです。

全部を環境のせいにしない。
全部を自分のせいにもしない。

そして経営者側もまた、「最近の若者の問題だ」だけで片付けてしまうと、本質を見失います。

なぜなら、人は環境の影響を強く受けるからです。

主体性がある人でも、無力感が続けば黙り始める。
改善提案を潰され続ければ、考えることを止める。

つまり、「主体性が無い人」が増えたのではなく、“ 主体性を失わせる環境 ” が増えている側面もあるのです。

【第4章】:「残る」ことも主体性である

こうした転職の話題で主体性というと、「転職すること」ばかりが注目されます。
自分自身の人生や生活に「主体的」に向き合っているのであればその通りです。

ですが実際には、「残る」という選択の方が、遥かに難しい場合があります。

なぜなら、残るということは、会社の現実と“ 向き合い続ける ” ということだからです。

・改善提案をする。
・役割を変える。
・上司と対話する。
・働く意味を再定義する。
こうした行動には、かなりのエネルギーが必要です。

実際、辞める方が楽な場面もあります。
ですが、「今いる場所で、どう働くか」を考え続けることも、立派な主体性です。

そして経営者側から見ても、本当に会社を変える人は、「不満を言わない人」ではありません。

むしろ、
「もっと良くしたい」
「このままでは危ない」
そう言ってくれる人です。
経営者本人では気付きにくいことを、意を決して言ってくれる人です。

しかし、その声を面倒扱いし続けると、やがて何も言われなくなります。
そして最後に残るのは、“従順だが、考えない組織”です。

そして経営者は言います。
「経営者目線を持て」

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【第5章】:問題は、転職回数ではない

経営者や採用担当者の中には、今でも「転職回数」を強く気にする人がいます。

もちろん、短期離職が極端に多ければ、一定の警戒は必要でしょう。
ですが本当に見るべきなのは、そこではありません。

重要なのは、“その人が、自分の人生を主体的に考えているか”です。

・言われたことだけやる
・波風を立てない
・従順

一見すると扱いやすく見えるかもしれません。
しかし、そういう人ばかりが残る組織は、変化できなくなります。

誰も問題提起しない。
誰も改善提案しない。
結果として、静かに弱っていく。

しかも現代日本は、人口減少が確定しています。(第4回でもう少し踏み込みます)

つまりこれからは、「辞めても代わりはいくらでも来る」という時代ではありません。

特に中小企業は、もう既にその現実に直面しています。

だから企業側にも、「この会社で働き続けたい」と思われる必要性が、今まで以上に問われています。


次回は、「採用できない会社」が増えているのではない。
“人が残らない会社”が増えている。という視点から、中小零細企業の現実を掘り下げていきます。

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