[当事者意識]第4回:「当事者意識が広がる組織とは何か」 ― “自分事の連鎖”をどう生み出すか

序章:「個人の問題」で終わらせてはいけない
ここまでの3回で、
・当事者意識とは何か
・なぜ人は他人事になるのか
・当事者意識はどこから生まれるのか
を整理してきました。
そして見えてきたのは、当事者意識は、単なる「本人の性格」ではない、ということです。
しかし現実には、
「最近の若者は主体性がない」
「責任感がない社員が増えた」
という言葉が、今もよく使われています。
もちろん個人差はあります。
ですが、ここまで見てきた通り、人は環境との関係性によって、
「当事者にもなる」
「他人事にもなる」
つまり問題を、「本人の意識の問題」だけで終わらせてしまうと、本質を見失いやすくなります。
今回は、『当事者意識が広がる組織とは何か』をテーマに、“自分事の連鎖”について考えていきます。
目次
- 序章:「個人の問題」で終わらせてはいけない
- 第1章:日本で長く続く「関わらない状態」
- 第2章:これは企業だけの話ではない
- 第3章:「関わらない空気」はなぜ広がるのか
- 第4章:当事者意識が広がる場には共通点がある
- 第5章:問われているのは「人を変えること」ではない
第1章:日本で長く続く「関わらない状態」
アメリカのギャラップ社によるエンゲージメント調査では、日本のエンゲージメントは長年、5〜6%前後という極めて低い水準が続いています。
エンゲージメントとは、
従業員が企業の目指す方向性に共感し、主体的に貢献したいと感じている「組織と個人の相思相愛な信頼関係」のこと。
しかも、この状態は “数十年単位” で大きく変わっていません。
重要なのは、別に日本人が「やる気がない国民性」という話ではないことです。
むしろ見えてくるのは、多くの人が“当事者になれない状態”です。
よく組織論などで使われる【働きアリの法則】では、
・2割が主体的に動く
・6割が流れに合わせる
・2割が消極的になる
という「2:6:2」の構造が語られます。
働きアリの法則(別名:2・6・8の法則)とは、昆虫の生態観察から見出された、組織における人材分布の偏りを示す経験則です。
しかし、先のエンゲージメント調査から考えると、日本の状態を見ると、主体的に関わっている層が、その2割にも届いていません。
5%ということは、2割どころか0.5割です。
つまり、「一部だけが動き、多くが他人事」という状態が常態化しているとも言えます。
これは、第1回で触れた【対岸の火事】が、社会規模で起きている状態とも言えるでしょう。

第2章:これは企業だけの話ではない
この構造は、会社だけの話ではありません。
例えば政治です。
本来、政治は生活に直結しています。
- 税金
- 社会保険
- 物価
- 教育
- 福祉
- 働き方
全て私たちの日常そのものに関わっています。
近年、個人の自由裁量所得が非常に少ないのは、原則として個人の資質ではなく、政治の問題です。
自由裁量所得とは 可処分所得(手取り収入)から、税金や生活維持に必要な費用(食費・住居費など)を差し引いた、個人が自分の意思で自由に使えるお金のこと。
しかし現実には、
「難しいことは政治家がやるもの」
「自分一人が考えても変わらない」
と感じている人は少なくありません。
さらに、
・会社の方針で投票先を決める。
・そもそも投票へ行かない。
そうした状況も珍しくありません。
※国政選挙の有効投票率は、2009年衆議院議員選挙以降の17年間:衆参合わせて計12回連続で60%を超えていません。有権者の4割が、日本と自分たちの将来を棄てている現状です。
これはまさに、「自分には関係ない」という感覚の表れです。
そしてその結果として、
不信感。
将来不安。
閉塞感。
そうした感覚が強まっていきます。
つまり当事者意識の問題は、企業だけではなく、
・国家
・地域
・家庭
・友人関係
あらゆる集団に共通する構造なのです。
結局、その集団の状態は、「どれだけの人が自分事として関わっているか」によって決まっていきます。
第3章:「関わらない空気」はなぜ広がるのか
前回、第3回では、『当事者意識は“空気”として伝播する』という話をしました。
つまり組織では、「関わる空気」も、「関わらない空気」も、周囲へ広がっていきます。
関わらない空気は、例えば、
・発言すると否定される。
・挑戦するとリスクだけ負う。
・結局、上が全部決める。
そう本人が感じている状態です。
すると人は、「余計なことはしない方がいい」を学習していきます。
その結果、
・指示待ちが増える。
・発言が減る。
・一部の人だけが疲弊する。
そして最終的には、「どうせ変わらない」が組織文化になっていきます。
心理学には、
【社会的手抜き】
【リンゲルマン効果】
という考え方があります。
社会的手抜きとは 「集団で作業すると、1人あたりの全力が低下する」という、集団心理によって引き起こされる無意識のパフォーマンス低下現象。
リンゲルマン効果とは 「チームの人数が増えるほど、1人あたりの発揮する力(貢献度)が小さくなる」という集団心理の現象。
人は、自分の関与が見えなくなるほど、責任感が弱まりやすくなります。
つまり、他人事は“空気”として広がっていくということです。

第4章:当事者意識が広がる場には共通点がある
では逆に、当事者意識が広がる場には、何があるのでしょうか。
そこには、いくつかの共通点があります。
例えば、
・判断や意思が反映される余地がある
・自分の仕事の意味が見える
・関与に対して応答がある
・「考えていい」と感じられる
といった状態です。
“完璧な自由”ではありません。
むしろ大切なのは、「自分の存在が切り離されていない」という感覚です。
人は、「自分が関与している」と感じた時に、責任感を持ち始めます。
さらに、「自分にもできる」と感じられるほど、関わろうとし始めます。
つまり当事者意識は、「偶然、生まれるものではない」ということです。
「当事者意識を持て」と言わなくても、自然に生まれる状態は作ることができます。
第5章:問われているのは「人を変えること」ではない
このシリーズでは、
第1回で【当事者意識とは何か】
第2回で【なぜ人は他人事になるのか】
第3回で【当事者意識はどこから生まれるのか】
を整理してきました。
そして今回見えてきたのは、『当事者意識は、組織全体へ広がっていく』ということです。
だからこそ、本当に問われているのは、「人を変えること」ではありません。
考えるべきなのは、「人が関わりたくなる状態をどう生み出すか」です。
経営でも、
組織でも、
国政でも、
社会でも、
家庭でも、
最終的にはそこへ行き着きます。
主体性とは、命令で作るものではありません。
責任感とは、押し付けるものでもありません。
人は、
「自分が関わっている」
「自分にもできる」
そう感じた時、初めて当事者になります。
あらゆる組織において、当事者意識とは、” 誰かに持たせるもの ” ではなく、“ 自然と生まれる状態をどう作るか ” が問われているのではないでしょうか。
あなたの会社では、従業員にどの様に当事者意識を持ってもらっていますか?


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