[当事者意識]第3回:「当事者意識は、いつ、どこから生まれるのか」 ― “自分の仕事だ”という感覚が、責任感とやりがいを生む

序章:「責任感」は後から生まれる
前回は、『無責任は原因ではなく結果である』という話をしました。
人は最初から無責任なのではなく、
「関われない」
「影響を与えられない」
そう感じ続けた結果として、少しずつ距離を取っていきます。
そしてその状態で、
「もっと責任感を持て」
「主体的に動け」
と言われても、うまく機能しません。
では逆に、人はどんな時に「これは自分の仕事だ」と感じるのでしょうか。
今回は、『当事者意識は、いつ、どこから生まれるのか』を掘り下げていきます。
目次
- 序章:「責任感」は後から生まれる
- 第1章:「やらされ仕事」と「自分の仕事」の違い
- 第2章:「自分が影響を与えている感覚」が責任感を生む
- 第3章:やりがいの正体
- 第4章:小さな意思決定が、人を当事者に変えていく
- 第5章:当事者意識は「空気」として広がる
第1章:「やらされ仕事」と「自分の仕事」の違い
同じ仕事をしていても、「やらされている」と感じる仕事もあれば、「自分の仕事だ」と感じる仕事もあります。
この違いは、仕事内容そのものではありません。
重要なのは、『自分が関与している感覚を持てているか』です。
例えば、
・自分で考える余地がある
・工夫できる
・意見を求められる
・判断を任される
こうした状態では、人は自然と仕事との距離が近くなります。
逆に、
・全て決められている
・指示通りに動くだけ
・考える必要がない
という状態では、仕事との距離が遠くなっていきます。
そして、その状態が続くと、責任感もモチベーションも薄れていきます。
人は、「任された」と感じた時に、初めて当事者になり始めるのです。
つまり当事者意識は、“ 参加感 ” や “ 関与感 ” の中から生まれてきます。

第2章:「自分が影響を与えている感覚」が責任感を生む
人は、『自分が影響を与えている』と感じた時に、責任感を持ち始めます。
例えば、
・自分の提案が採用された
・工夫した結果が良かった
・誰かから感謝された
・自分の判断が結果に繋がった
こうした経験が積み重なると、「これは自分の仕事だ」という感覚が強くなっていきます。
ここで重要なのは、責任感は、やらされ仕事や押し付けでは生まれないということです。
むしろ、
「関わっている実感」
「影響を与えている感覚」
の中から自然に生まれてきます。
前回、
「何を言っても変わらない」
「何をやっても影響を与えられない」
という感覚は、当事者意識を壊しやすい、という話をしました。
逆に言えば、『自分が影響を与えられる』と感じられるほど、人は責任感を持ちやすくなるのです。
第3章:やりがいの正体
ここで、「やりがい」についても考えてみる必要があります。
やりがいというと、「楽しい仕事」をイメージする人も少なくありません。しかし実際には、大変な方がやりがいを感じる場合があります。逆に、条件が良くても、虚しさを感じる仕事もあります。
この違いは何でしょうか。
その一つが、『自分が関与している実感』です。
人は、
・意味を持って関わっている
・誰かや何かに、意図した影響を与えている
・そう感じた時に、仕事へ感情が繋がり始めます。
そして、その結果として生まれる「たのしさ」は、単なる娯楽的な楽しさとは少し違います。
責任感を持って真剣に向き合った結果として感じる、“ 愉しさ ” に近いものです。
だからこそ、「楽しい仕事=やりがい」と言うより、「愉しい仕事=やりがい」だと言えます。
「楽しい」と「愉しい」は、別の種類の「たのしさ」です。
やりがいとは、外から与えられるものではありません。
“ 自分が意味を持って関わっている ”
そう感じられる状態の中から生まれてくるものなのです。

第4章:小さな意思決定が、人を当事者に変えていく
ここで重要なのは、
【当事者意識は、大きな権限がなければ生まれないわけではない】
という点です。
むしろ重要なのは、『日常の小さな意思決定』です。
例えば、
・どう進めるかを考える
・自分なりに工夫する
・意見を出す
・改善提案をする
こうした小さな積み重ねが、「自分で関わっている」という感覚を強めていきます。
逆に、
全てがマニュアル化され、
全てを指示され、
考えなくていい状態が続くと、人は少しずつ思考を止めていきます。
すると、関与感が薄れ、他人事化が始まります。
心理学には「自己決定理論」という考え方があります。
人は「命令や報酬」ではなく、「自分で選び、成長を感じ、誰かとつながっている」と実感できたときに、最も高い主体性と持続的な意欲を発揮するというモチベーション理論。
人は、
・自律性
・有能感
・関係性
この3つが満たされるほど、内発的に関わろうとします。
つまり、【 当事者意識には“再現性”がある 】ということです。
第5章:当事者意識は「空気」として広がる
ここまで見てきた通り、当事者意識は、個人の性格だけで決まるものではありません。
関わり方によって人は、当事者にもなるし、他人事にもなる。
そしてさらに重要なのは、その状態が周囲へ広がっていくことです。
誰かが考え始める。
発言する。
主体的に関わる。
すると周囲も、
「関わっていいんだ」
「考えていいんだ」
という空気を感じ始めます。
逆に、
「どうせ言っても無駄」
「余計なことはしない方がいい」
という空気が広がると、他人事も連鎖していきます。
つまり当事者意識は、個人の中だけで完結するものではなく、“組織の空気”として広がっていくのです。
では、その空気はどのようにして組織全体へ広がっていくのでしょうか。
そしてなぜ日本では、
「関わらない状態」
「他人事の空気」
が固定化しやすいのでしょうか。
最終回では、『当事者意識が広がる組織とは何か』を掘り下げていきます。


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