[保身]第3回 主体性を奪う関わり方/引き出す関わり方 ― 上司の一言が行動を決める

環境は「誰が」つくっているのか
第1回では、主体性がないのではなく、「出さない状態」があることをお伝えしました。
第2回では、その状態が組織の中で感染し、広がっていく構造を見てきました。
では、その「環境」は一体、誰がつくっているのでしょうか。
現場を見ていると、こうした声をよく耳にします。
・同じ会社なのに、チームによって雰囲気が違う
・上司が変わっただけで、部下の動きが変わる
これは偶然ではありません。
環境や風土は、自然にできているように見えて、実際には日々の関わりの積み重ねによって形づくられています。
本記事では、主体性を奪う関わり方と、引き出す関わり方の違いを整理していきます。
目次
- 環境は「誰が」つくっているのか
- 第1章 関わり方が風土をつくっている
- 第2章 主体性を奪う関わり方とは何か
- 第3章 主体性を引き出す関わり方の正体
- 第4章 関わり方が“行動の正解”をつくる
- 第5章 経営者が向き合うべき本当の課題
第1章 関わり方が風土をつくっている
第2回で見た通り、組織の中では「空気」が行動を決めます。
そしてその空気は、やがて「風土」になります。
では、その風土はどこから生まれるのか。
結論はシンプルです。
上司や、従業員同士の日々の「関わり方」です。
・何気ない一言
・ミスに対する反応
・意見に対する受け止め方
こうした日常の接点の積み重ねが、
「何をすると安全か」
「何を避けるべきか」
という基準をつくっていきます。
制度や仕組みよりも、日々の関わりの方が、はるかに強い影響を持っています。

第2章 主体性を奪う関わり方とは何か
では、どのような関わり方が主体性を奪うのでしょうか。
典型的なのは次のようなものです。
・失敗を強く責める
・正解だけを求める
・結果だけを見て過程を見ない
・意見を否定する、もしくは無視する
こうした関わりが続くと、人の行動は変わります。
・発言しなくなる
・挑戦しなくなる
・責任を回避するようになる
ここで働いているのが、スキナーの「強化理論」です。
強化理論とは、別名を「オペラント条件付け」と言い、行動の直後に「望ましい結果(報酬)」を与えてその行動を増やしたり、「望ましくない結果(罰)」を与えて行動を減らしたりすることで、自発的な行動を学習・コントロールさせる心理学理論のことを言います。
人は「罰」を避け、「報酬」に近づくように行動します。
・発言 → 否定される → 発言しなくなる
・挑戦 → 叱責される → 挑戦しなくなる
つまり、主体性がなくなるのではありません。
『主体性を出さない方が合理的な状態』になっているのです。
上司はコントロールしているつもりでも、実際には「保身」を強化していることがあります。
これだけが理由ではありませんが、だからこそ私は、常々、「企業成長のキーマンは管理職(リーダー)だ」とお伝えしているのです。
第3章 主体性を引き出す関わり方の正体
では逆に、主体性はどうすれば生まれるのでしょうか。
重要な前提があります。
主体性は「求めるもの」ではなく、『引き出されるもの』です。
そのためには、次の条件が必要になります。
・意見を言っても関係が壊れない
・挑戦しても否定されない
・失敗しても学習として扱われる
などの様な安心感です。心理的安全性もこの内の一つです。
ここで参考になるのが「ピグマリオン効果」です。
ピグマリオン効果とは、他者からの高い期待や信頼を受けることでモチベーションが高まり、その期待に沿うように「実際の成果や能力が向上する」心理的傾向(教師期待効果)のことです。
人は、周囲からの期待によって行動や成果が変わります。
上司の関わり方が変わると、行動も変わります。
・「どう考えた?」と問いを投げる
・結果だけでなくプロセスを見る
・失敗を責めるのではなく、意味づけする
同じ出来事でも、関わり方によって意味が変わります。
そしてその意味づけが、次の行動を決めていきます。

第4章 関わり方が“行動の正解”をつくる
ここまでの流れを整理します。
・人は環境に適応する
・関わり方が風土になる
つまり何が起きているのか。
それは、「行動の正解」が書き換わっているということです。
主体性が出ない組織では、
・失敗しないことが正解
・目立たないことが正解
と、従業員は学習し、実践しているだけです。
一方で、主体性が出る組織では、
・試すことが正解
・前に出ることが正解
元々やる気を持って入社してきた人たちです。やる気を出して仕事に向かいます。
初期の段階では、個人の資質の差はほとんど関係ありません。
人は「正解とされる行動」に適応します。
主体性があるかないかではなく、「どの行動が正解とされているか」の違いなのです。
第5章 経営者が向き合うべき本当の課題
ここまでを整理すると、見えてくるものがあります。
・保身は個人の問題ではない
・環境によって引き出される
・そして感染する
さらに、
・関わり方によって強化される
つまり問題は「人材」ではありません。管理職による「関わり方」です。
ここで一度、立ち止まって考える必要があります。
今働いている企業・組織において、自分の関わりは、次のどちらを強めているのか。
・主体性か
・それとも保身か
上司自身もまた、環境の一部です。
しかもチームに取っては要となる重要な役割です。
そして決定権と責任を持つ上司の関わりが、組織の風土を形づくっています。
では、その風土をどのように設計していけばよいのでしょうか。
次回は、「主体性が循環する組織の設計」について掘り下げていきます。


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