[保身]第4回 主体性が回る組織はどう設計されているのか ― 保身を超える風土づくり

主体性は設計できるのか
第1回:『なぜ人は“保身”に走るのか ― 主体性を奪う前提条件』
では、主体性は「ない」のではなく「出せない状態」であることをお伝えしました。
第2回:『保身はなぜ“感染”するのか ― 空気が行動を決める構造』
では、その状態が組織の中で感染し、広がっていく構造を見てきました。
第3回:『主体性を奪う関わり方/引き出す関わり方 ― 上司の一言が行動を決める』
では、その起点が「関わり方」にあることを整理しました。
では、その関わりが積み重なってできる「風土」は、どのように捉えるべきなのでしょうか。
多くの場合、風土は「自然にできるもの」と考えられています。
しかし本当にそうでしょうか。
本シリーズ最終回の本記事では、主体性が回る組織はどのように設計されているのかを、これまでの流れを踏まえて整理していきます。
ここでの前提は一つです。
主体性は“性格”ではなく、“状態”であるということです。
目次
- 主体性は設計できるのか
- 第1章 保身が優位にならない環境とは何か
- 第2章 「報われ方の納得感」が行動を決める
- 第3章 目標の質が主体性を左右する
- 第4章 主体性が循環する組織の特徴
- 第5章 経営者が設計すべきものは何か
第1章 保身が優位にならない環境とは何か
これまで見てきた通り、保身は特別なものではありません。
損失や不利益、評価の低下、責任追及といったリスクを避けるための、合理的な防衛反応です。
つまり、人は合理的に行動しています。
問題は、保身を選んでいることではありません。
保身の方が合理的になっている環境です。
・挑戦すると損をする
・発言すると否定される
・失敗すると評価が下がる
このような状態では、保身を選ぶのが当然です。
ここで重要なのは、主体性が出ないのではなく、「保身を選ぶ方が自然な状態」になっているという認識です。
では何が必要なのか。
それは、主体性の方が合理的になる環境です。

第2章 「報われ方の納得感」が行動を決める
ここで一つ目の視点です。
『人は、自分の行動がどのように報われるかを見ています』
これはアダムスが提唱した【公正理論】として知られている考え方です。
公正理論(公平理論)とは、自分が投入した努力や成果の「仕事へのインプットと報酬の比率」を他者と比較し、そこに不公平さを感じたときに「インプットを減らす」「他者や自分への評価(認識)を変える」といった行動を通じて、心理的均衡(公平感)を取り戻そうとする行動理論のことです。
人は、
・どれだけ努力したか
・どんな成果を出したか
だけでなく、
・それに対してどう扱われたか
・他の人と比べてどうか
を見ています。
例えば、
・挑戦しても評価されない
・むしろリスクだけが高い
・何もしない人と評価が変わらない
こうした状態では、どうなるか。
人は動かなくなります。
むしろ、
・手を抜く
・関わらない
・責任を回避する
といった保身の行動を選ぶようになります。
つまり、不公平感が、保身を生むのです。
逆に、
・挑戦が適切に扱われる
・プロセスも見られている
こうした状態では、人は自然と動きます。
ここで重要なのは、「やる意味」と「納得感」がなければ、人は動かないということです。

第3章 目標の質が主体性を左右する
次に、行動を直接左右する要素として「目標」があります。
これはロックとレイサムによる【目標設定理論】で示されている通りです。
公正理論(公平理論)とは、自分が投入した努力や成果の「仕事へのインプットと報酬の比率」を他者と比較し、そこに不公平さを感じたときに「インプットを減らす」「他者や自分への評価(認識)を変える」といった行動を通じて、心理的均衡(公平感)を取り戻そうとする行動理論のことです。
『目標には、行動を引き出すものと、逆に止めてしまうものがあります』
例えば、
曖昧な目標
・「主体的に動いてほしい」→ 何をすればいいのか分からない
過大な目標
・明らかに達成困難な数値 → 失敗を避ける行動になる
意味のない目標
・なぜやるのか分からない → 最低限しかしない
しかし、これらの目標は、すべて保身を強めます。
一方で、
・明確
・現実的
・意味が理解できる
などの目標は、行動を引き出します。
つまり、目標の質そのものが、主体性か保身かを分けているのです。
第4章 主体性が循環する組織の特徴
では、主体性が自然に発揮される組織には、どのような特徴があるのでしょうか。
いくつかの共通点があります。
・挑戦が不利にならない → 失敗しても関係や評価が大きく崩れない
・判断基準が共有されている → 何をすればよいかが分かる
・情報が閉じない → 状況が見えるため、判断できる
ここで重要なのは、制度そのものではありません。
日々の関わりの中で、
・どう扱われるのか
・どう評価されるのか
が一貫していることです。
一貫しているということは、ブレない、ということです。
相手によって対応が変わったりしない、ということです。
第3回で見た通り、関わり方が風土になり、風土が行動の正解をつくります。
その結果として、主体性は循環していきます。

第5章 経営者が設計すべきものは何か
ここまでを整理すると、見えてくるものがあります。
・保身は誰の中にもある
・環境によって引き出される
・感染し、強化される
つまり、保身そのものを無くすことはできません。
では何が問われているのか。
それは、
・保身が選ばれ続ける状態を放置するのか
・それとも選ばれにくい状態をつくるのか
という意思です。
ここで、もう一つ重要な視点があります。
上司・管理職が保身に走ると、多くの従業員がやる気を無くして辞めていきます。
そして残った人も、そのチーム全体が保身に適応していきます。
では、その上司・管理職をそうさせているのは誰か。
多くの場合、それは経営者の意思決定や関わり方です。
・何を評価するのか
・どこまで責任を負わせるのか
・失敗をどう扱うのか
これらが管理職の行動を決め、その先の現場に連鎖していきます。
つまり、風土は偶然ではありません。
意思決定の積み重ねによって、つくられているものです。
最後に。
主体性は、求めても生まれるものではありません。
しかし、環境が整えば、自然と発揮されるものです。
その環境は、偶然ではなく、意思によってつくられます。
問われているのは「人」ではありません。どのような関わりを選ぶのか。
その意思そのものです。


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