[人事考課]第3回 「人事評価とは何か」 ― なぜ“将来づくり”が機能しなくなるのか

「測る」以前で止まっている現実

第2回では、人事考課(査定評価)が会社の「現状」を確認する仕組みであることをお伝えしました。

ただし、もう一度振り返ってください。

多くの企業では、「現状を正しく測る」という意識そのものが十分ではありません。
そして勿論、その現状を踏まえて会社の将来を作るということも想定されていません。

特に零細企業においては、人事評価の本来の機能である「育成のための評価」自体が仕組みとして存在していないケースも少なくありません。

その結果、評価はどうなるか。
「会社への貢献度で判断する」という、極めて曖昧なものになっていきます。

つまり、「測る(人事考課)」で止まっているのではなく、そもそも“測ること自体が成立していない”企業も多いのです。

では仮に、現状を把握できたとしたらどうでしょうか。

その先にあるべきもの――
それが、人事評価です。

目次

  1. 「測る」以前で止まっている現実
  2. 第1章 人事評価の役割 ― 会社の「将来」をつくる
  3. 第2章 なぜ人事評価は機能しなくなるのか ― “評価=査定”という認識
  4. 第3章 構造的な問題 ― なぜ育成まで踏み込めないのか
  5. 第4章 主体性はなぜ失われるのか ― 評価との関係
  6. 第5章 人事評価を機能させるために ― 「つなぐ」という発想

第1章 人事評価の役割 ― 会社の「将来」をつくる

人事評価とは何か。
それは、人材育成・能力開発・適正配置を通じて、会社の将来をつくる仕組みです。

第1回でも整理しましたが、人事考課(査定評価)が「現状の確認」であるのに対し、人事評価は「将来づくり」にあたります。

もう少し具体的に整理すると、役割の違いはこうなります。

人事考課は、これまでの成果や実績をもとに、「誰がどの程度できているか(=処遇をどうするか)」を判断する機能です。

一方で人事評価は、「人事考課を踏まえて、これからどのような人材に育てていくのか」を決める機能です。

つまり、過去に対する判断か、未来に対する意思決定かという違いです。

ここで重要なのは、「評価」という言葉の本来の意味です。

評価とは、単に優劣をつけることではありません。良い点も悪い点も公正に捉え、現状と理想のギャップを明らかにし、それをどう埋めるかを考えるプロセスです。

したがって、人事評価とは、「どのような人材を育て、どのような会社にしていくのか」という経営そのものの意思決定に直結します。

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第2章 なぜ人事評価は機能しなくなるのか ― “評価=査定”という認識

ここで一つ、重要な前提を確認しておきます。

第1回第2回でもお伝えした通り、人事評価と人事考課は本来まったく役割の異なるものです。

しかし現実には、この2つが明確に区別されていません。

現場で「評価」という言葉が使われるとき、その多くは人事考課(査定評価)を指しています。
つまり、「評価=査定」という認識が前提になっているわけです。

この状態では、人事評価(将来づくり)は実質的に存在しません。
議論の対象にならないからです。

その結果、評価面談はどうなるか。
多くの場合、過去の結果を説明する場になります。

そして、そこでは次期の目標設定で終わってしまい、「これからどう成長するか(企業的には「どう育てるか」)」という視点が抜け落ちていきます。

本来であれば、評価は未来のためにあるものです。しかし現実には、過去の整理で完結してしまっている。

このズレが、人事評価を機能させない大きな要因です。

第3章 構造的な問題 ― なぜ育成まで踏み込めないのか

では、「育てたいと思っていないのか」というと、決してそうではありません。

多くの経営者や管理職は、人材育成の重要性を理解しています。それでも実際には、育成まで踏み込めない。

このギャップはどこから生まれるのでしょうか。

注目すべきポイントは4つあります。
・個人
・構造
・教育
・行動の歪み

まず「個人」です。

評価を行う側に、「現状をどう捉え、どのように育成につなげるか」というスキルや視点が充分に備わっていないケースが多く見られます。

評価はできても、その後どう育てるかが分からない。結果として、フィードバックが表面的なものに留まってしまいます。

次に「構造」です。

短期的な成果を優先する仕組みになっていると、どうしても目先の結果に意識が向きます。育成が仕組みとして組み込まれていなければ、後回しになるのは当然の流れです。

そして「教育」です。

評価者に対する訓練が行われていなければ、「育てるための評価」を実践することは難しくなります。結果として、経験や感覚に頼った運用に陥りやすくなります。

最後に「行動の歪み」です。

現場では、次のような変化が起きてきます。
査定で評価されることばかりをやる様になってしまい、余計なことをしないために指示待ちになったり、上司に媚びを売ったりするようになる人も出てきます。

これらはすべて、個別の問題のように見えて、実はつながっています。
問題は、「誰か一人の意識や能力」ではなく、構造として発生しているものなのです。

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第4章 主体性はなぜ失われるのか ― 評価との関係

ここで、「主体性」というものに関して考えてみます。

多くの人は、入社時にはやる気を持っています。
自分なりに考え、成長したいという想いもあるはずです。

ところが時間が経つにつれて、その姿勢が変わっていきます。

主体的に仕事をしようとすると、周りからアレコレ言われ、出る杭は打たれ、失敗すれば叩かれる。
結論、余計なことはしないに限る
のです。

そしていつの間にか、「査定評価に合格すること」が目的になってしまい、主体性は影を潜めていきます。

その結果、現場では、指示待ちが増え、挑戦は減り、自分で目標を設定しなくなる ―― そうした変化が起きていきます。

なぜ、このようなことが起きるのでしょうか。

ここで参考になるのが、期待理論 という考え方です。
これは、人は「その行動を取れば報われる」と思える行動を選ぶ、という理論です。

つまり、評価される行動が明確であれば、人は自然とそこに合わせて動くようになります。

さらに、自己決定理論 も重要です。
人は本来、「自分で決めて動いている」と感じられるときに意欲が高まります。
しかし、評価に合わせる行動が中心になると、その感覚が徐々に失われていきます。

結果としてどうなるか。
主体性がない人が増えるのではなく、主体性を発揮しにくい状態がつくられていくのです。

第5章 人事評価を機能させるために ― 「つなぐ」という発想

ここまで見てきたように、人事考課(現状)と人事評価(将来)は、多くの企業で分断されています。
一連の流れであるという認識がない企業も多いのです。

その結果、育成も主体性も機能しにくくなっている。

では、どうすればよいのでしょうか。

必要なのは、「測る」と「育てる」をつなぐことです。
人事考課の結果を、そのまま人事評価に活かす。
つまり、「この現状に対して、次に何をするのか」を具体的に設計することです。

言い方を変えれば、

人事評価で会社を成長させるために、人事考課のデータを活かすということです。

これは、まさに改善活動の基本と同じです。
現状を把握し、課題を見つけ、改善策を考え、実行する。

そして結果を確認し、さらに改善していく。ここからPDCAサイクルを回していくのです。

評価は、ここまで踏み込んで初めて意味を持ちます。

評価とは結果ではありません。
未来に向けた関わりそのものです。


では、それを実務としてどのように設計し、運用していけばよいのでしょうか。

次回は、人事評価を「使えるもの」にするための具体的な考え方と進め方について掘り下げていきます。

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