[失敗]第3回 失敗の責任は誰にあるのか ― “個人の問題”で終わらせた組織が止まる理由

[失敗]第1回 なぜ人は失敗を隠すのか ― “失敗=悪”という扱いが主体性を奪う
「なぜ、もっと早く言わなかったのか?」
経営者であれば、一度はそう感じたことがあるのではないでしょうか。
小さなミスが放置され、気付いたときには大きな問題になっている。そんな場面は珍しくありません。
しかし、ここで一度立ち止まって考えてみてください。
従業員は本当に「隠そうとしている」のでしょうか。
それとも、「言えない状態」に置かれているのでしょうか。
目次
- 第1章:失敗は当たり前に起きるが、そう扱われていない
- 第2章:人は合理的に“言わない”を選び、保身に至る
- 第3章:失敗を恐れる背景と、保身の連鎖
- 第4章:心理的安全性と結論
- 第5章:あなたの組織ではどうか
第1章:失敗は当たり前に起きるが、そう扱われていない
まず押さえておきたい前提があります。
失敗は、誰にでも起こるものです。
これまで一度も失敗したことがない人などいません。
いるとすれば、それは“気付いていない”か、“忘れている”だけです。
本来、失敗は特別なものではありません。むしろ仕事をしていれば、一定数起きて当然のものです。
ところが多くの職場では、失敗はそう扱われていません。
「失敗=悪」
「評価が下がるもの」
として扱われています。
この前提が、すべてを歪ませます。
現場では、こんなことが起きます。
報告が遅れる。
小さなミスが大きくなる。
後から問題が発覚する。
そのたびに、「意識が低い」「責任感がない」といった評価が下されがちです.
しかし、それは表面的な見方です。
本質はもっとシンプルです。
“言えない状態”がつくられているのです。
第2章:人は合理的に“言わない”を選び、保身に至る

人はどういうときに、報告をためらうのでしょうか。
失敗をすると叱責される。
評価が下がる。
責任を強く追及される。
こうした経験が積み重なると、人は学習します。
「言わない方が自分にとって得だ」と。
ここで重要なのは、【人は常に合理的に行動している】という点です。
つまり、隠しているのではありません。
隠した方が不利にならないから、そうしているのです。
ここで生まれるのが「保身」という行動です。
この文脈での保身とは、自分が不利にならないために、
・失敗を隠す
・誤魔化す
・事実を歪める
そんな行動を指します。
たとえば、
・報告をしない
・一部だけ伝える
・都合の良い形にして伝える
・問題を小さく見せる
つまり、こうした行動です。
これは単なる「消極的な態度」ではありません。
むしろ、自分を守るための極めて積極的な行動です。

第3章:失敗を恐れる背景と、保身の連鎖
では、なぜ人はそこまで失敗を恐れるのでしょうか。
一つの背景として、育ってきた環境の影響もあります。
多くの人は学生時代、
点数で評価され、
間違いを指摘され、
時には失敗をからかわれる経験をしています。
その中で、
「失敗は恥ずかしいもの」
「避けるべきもの」
という認識が強く形成されていきます。
実際に、こうした経験が影響して、社会に出ても積極的になれない人は少なくありません。
ただし重要なのは、これが良い悪いという話ではないことです。
そうした前提を持った人たちが組織にいるという現実です。
だからこそ問われるのは、その前提の上で「どのような環境をつくるか」です。
問題は、保身が個人で完結しないことです。
一人が「正直に言うと損をする」と感じている組織では、その空気は周囲にも伝播します。
・正直に言わない方がいい
・余計なことは言わない方がいい
・挑戦しない方が安全だ
こうした空気が広がると、次に起きるのが「連鎖」です。
保身的な上司のもとでは、保身的な部下が育ちます。
上司自身が失敗を隠す。
責任を回避する。
都合よく報告する。
その姿を見た部下は、「それが正しい振る舞いだ」と学習します。
結果として、
・上に合わせる
・本音を言わない
・問題を表に出さない
こうした行動が組織全体に広がっていきます。
その結果どうなるか。
主体性の芽が、組織全体で潰れていきます。

第4章:心理的安全性と結論
この状態を説明する概念に、「心理的安全性」があります。
これは、失敗や意見を出しても不利益を受けない状態のことです。
ここで言う安全とは、「仲が良い」という意味ではありません。
発言しても大丈夫だと思える状態かどうかです。
保身が強く働いている組織は、例外なくこの心理的安全性が低いと言えます。
ここまでを整理すると、こうなります。
①失敗は本来、誰にでも起こるものです。
②しかし、それが「悪」として扱われる。
③その結果、人は保身に走る。
④保身は情報を歪め、主体性を潰していく。
導かれる結論はシンプルです。
問題は失敗ではありません。
“失敗を悪とする扱い方”にあります。
第5章:あなたの組織ではどうか
あなたの組織ではどうでしょうか。
失敗はそのまま共有されていますか。
それとも、どこかで歪められて伝わっていないでしょうか。
もし後者であれば、それは個人の問題ではありません。
組織のつくり方の問題です。
多くの組織は、「失敗を減らそう」とします。
しかし本当に考えるべきは、そこではないと感じませんか?
そもそも、失敗はなくすべきものなのでしょうか。
次回は、
「失敗はなぜ必要なのか」
というテーマで、成長との関係を整理していきます。


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