[主体性]第3回:主体性は性格ではなく、“表れ方”が違う ― MBTI理論と“深層的多様性”から見る主体性

序章 「主体性がある人」のイメージが偏っていないか

「主体性がある人」と聞くと、どのような人物を思い浮かべるでしょうか。

積極的に発言する人。
自分から前へ出る人。
リーダーシップを取る人。
即断即決で動く人。

おそらく、多くの職場で“分かりやすい主体性”として評価されやすいのは、こうしたタイプです。

しかし、本当にそれだけが主体性なのでしょうか?

静かに改善を続ける人もいます。
深く考えてから動く人もいます。
周囲を支える形で動く人もいます。
表には出なくても、準備や調整を徹底する人もいます。

こうした人たちも、充分に主体的です。

にもかかわらず、「主体性がある人」のイメージだけで見てしまうと、多くの主体性が見落とされ始めます。

問題なのは、“主体性の有無”だけではありません。
「主体性の捉え方」が偏っている可能性があるのです。

第1章:主体性を「性格」で決めつける危険性
第2章:MBTI理論で見る「主体性の出方」の違い

第3章:「深層的多様性」を理解しない組織で起きること
第4章:「静かな主体性」を見落とす組織
第5章:主体性を引き出す組織に必要な視点

第1章 主体性を「性格」で決めつける危険性

職場ではよく、
「あの人は主体性がある」
「あの人は主体性がない」
という言葉が使われます。

しかし、この評価には注意が必要です。

本当に主体性が無いのでしょうか。実は、“自分と違う出し方”をしているだけではないでしょうか。

例えば、会議で積極的に発言する人は目立ちます。一方で、発言前にじっくり考える人は、慎重さゆえに「消極的」と誤解されることがあります。

しかし、慎重に考えること自体は、主体性の欠如ではありません。
主体性を「性格特性」と混同すると、組織は“目立つ人”ばかりを評価し始めます。

すると、

  • 話す人ばかり評価される
  • 慎重な人が埋もれる
  • 支援型人材が見落とされる
  • 考察型人材が発言しなくなる

といった偏りが起き始めます。

第2回では、「主体性は“ある・ない”ではなく、“発揮できるかどうか”」という話をしました。

今回はさらに一歩進めて、「主体性は“どう表れるか”が人によって違う」という視点で考えていきます。

第2章 MBTI理論で見る「主体性の出方」の違い

ここで参考になる考え方のひとつが、MBTI理論です。今、若者たちの間でも流行っていますね。

MBTIは、性格の優劣を決めるものではありません。人それぞれの「認知傾向」や「意思決定傾向」の違いを整理する考え方です。大きく16通りに大分類することで、分かり易く表現しています。

例えば、外向型(E)の人は、話しながら考える傾向があります。
一方、内向型(I)の人は、頭の中で整理してから話す傾向があります。

つまり、会議で即座に発言しないからといって、「主体性が低い」とは限りません。

また、感覚型(S)の人は、現実性や再現性を重視します。
対して直観型(N)の人は、可能性や未来像を重視します。

思考型(T)は合理性を優先し、感情型(F)は人への影響を重視します。
判断型(J)は計画性を好み、知覚型(P)は柔軟性を重視します。

ここで重要なのは、「それぞれどちらが優れているか」ではありません。主体性は、どの特性でも発揮されます。“表現”が違うだけなのです。

発言量が多い人だけが主体的なのではありません。慎重に考え、裏側で支え、調整し、準備する行動にも主体性は表れます。ここは絶対に間違えてはいけない部分です。

第3章 「深層的多様性」を理解しない組織で起きること

近年、多様性という言葉を耳にする機会は増えました。

しかし実際には、多様性というと「年齢」「性別」「国籍」など、“見える違い”ばかりが注目されがちです。
それは多様性の中でも「表層的多様性(Surface-level Diversity)」と呼ばれています。もちろんそれも大切です。

ただ、組織に対し、より大きな影響を与えるのは、「価値観」「認知特性」「判断基準」などの、“見えにくい違い”です。
これは「深層的多様性(Deep-level Diversity)」と呼ばれています。

例えば、
・即断型と熟考型
・変化志向と安定志向
・合理重視と関係重視
なども、深層的多様性の一部です。
MBTI理論も、この“見えにくい違い”を理解する参考になります。

しかし組織では、自分と違う考え方に対して、「主体性が低い」「やる気がない」と誤認してしまうことがあります。

即断型の上司は、慎重な部下を「遅い」と感じるかもしれません。
逆に、慎重型の上司は、即断型の部下を「雑だ」と感じることもあります。

ですが、それは優劣ではなく、“違い”です。
違いを理解せず、「自分と同じ動き方」を求め始めると、多様な主体性は少しずつ、そして確実に消えていきます。

第4章 「静かな主体性」を見落とす組織

主体性という言葉は、どうしても「積極的な行動」と結び付けられやすい傾向があります。
しかし実際には、「主体性」と「積極的な行動」は、決してイコールではありません。

主体性には様々な形があります。
・改善提案を文章で出す人。
・トラブルを未然に防ぐために準備を徹底する人。
・周囲の負担を減らすために調整役へ回る人。
・空気を読みながら場を整える人。
こうした行動も、実に立派な主体性です。

ところが組織によっては、「声が大きい人」「目立つ人」ばかりが評価されます。
すると、前述したような“静かな主体性”は徐々に表へ出なくなります。

心理学には、「ハロー効果」という考え方があります。これは、目立つ特徴に評価全体が引っ張られる現象です。
「身だしなみを整えている人は、まじめな人だ」
「いつもはきはき話す彼女は、悩みなんてない」
の様な、ある意味、勝手な決め付けにもなります。

つまり、「よく話す」→「主体性が高い」と短絡的に判断されることがあるのです。
しかし実際には、発言量と主体性は必ずしも一致しません。

「見えやすい主体性」だけで人を評価すると、多様な強みを持つ人材を見落とし始めます。

第5章 主体性を引き出す組織に必要な視点

主体性を高めたいのであれば、「同じ動き方」を求め過ぎないことが重要です。
必要なのは、「どんな形で主体性が表れる人なのか」を見る視点です。

主体性とは、“目立つ行動”ではありません。静かな主体性も、組織をしっかりと支えています。

そして、人は「違い」を否定され続けると、自分らしい主体性を出しにくくなります。逆に、「違い」を理解されると、人は安心して意見を出しやすくなります。

この安心感は、やがてエンゲージメントへ繋がり、主体性の発揮へも繋がっていきます。

では経営者や管理職は、実際に何をすれば良いのでしょうか。

最終回では、「従業員満足度」「エンゲージメント」「主体性」の関係を整理しながら、主体性を引き出すための関わり方について掘り下げていきます。

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