[教育 × 主体性]第5回:なぜ人が辞める会社と、人が育つ会社に分かれるのか — 人格と主体性が組織文化を決める

第1回では「学びを止める教育」、
第2回では「社会人OS」、
第3回では「人格と地位」、
第4回では「知恵の継承」について考えてきました。
振り返ると、このシリーズで語ってきた内容はすべて「人格」と「主体性」という二つの言葉と、その為に必要な[教育]に集約されます。
そして実は、この二つ、「人格」と「主体性」の欠如こそが、現代企業が抱える多くの経営課題の根底に存在しています。
離職。
採用難。
ハラスメント。
世代間ギャップ。
業務継承の失敗。
これらは別々の問題として扱われがちですが、本質的には同じ根から生まれている現象なのです。
目次
- 第1章 人は仕事で辞めるのではなく、人間関係で辞める
- 第2章 組織文化は社長の言葉ではなく行動で決まる
- 第3章 主体性は「出せ」と命令して生まれるものではない
- 第4章 人格と主体性は、令和時代の企業競争力そのものである
- 第5章 教育の本当の目的

第1章 人は仕事で辞めるのではなく、人間関係で辞める
企業の離職理由調査を見ると、給与や待遇以上に上位へ現れるのが人間関係です。
もちろん生活のために給与は重要です。しかし実際の退職相談の現場では、
「上司を信用できない」
「相談しても無駄」
「頑張っても認められない」
「会社の言っていることとやっていることが違う」
という言葉が繰り返し出てきます。
つまり従業員は仕事内容そのものよりも、その職場に流れる空気や価値観に疲弊して辞めているのです。
人格が伴わない管理職。
主体性を失った従業員。
責任転嫁が横行する組織。
こうした状態が続けば、どれほど待遇を改善しても根本解決にはなりません。

第2章 組織文化は社長の言葉ではなく行動で決まる
経営理念を掲げる企業はたくさんあります。
しかし従業員が見ているのは壁に貼られた理念ではありません。
経営者が何を許し、
何を評価し、
何を見逃し、
何を称賛するのか。
その日々の行動です。
人格を評価せず成果だけを評価する会社では、成果のためなら手段を選ばない人が増えます。
保身を許容する会社では、挑戦する人が消えていきます。
責任逃れを見逃す会社では、主体性が失われます。
つまり組織文化とは、経営者が意図して作るものではなく、経営者が容認したものによって形成されるのです。
現代日本の政治を見てみてください。
裏金は横行し、賄賂は取りまくり、議員は嘘を吐きまくり、それをひたすら隠し、誤魔化すために更に嘘を重ねる。
その結果、国民は、「誰がやっても変わらない」と諦め、政治に関心を無くしてしまいました。
その結果、現在進行形で更にひどい状況に転がり落ち続けています。
従業員が組織運営に関心を持つかどうかは、経営者たちの行動次第です。

第3章 主体性は「出せ」と命令して生まれるものではない
多くの経営者が口にします。
「もっと主体性を持ってほしい」
しかし主体性とは命令で発生するものではありません。
人は心理的に安全であり、自分の存在価値を感じられ、自ら考える余白が与えられたときに初めて主体性を発揮します。
反対に、
失敗が許されない。
意見を言えば否定される。
挑戦しても評価されない。
そんな環境では、防衛本能として指示待ちが生まれます。
主体性不足は個人の問題ではなく、組織の結果なのです。
だからこそ、主体性を求める前に、主体性が育つ環境を作らなければなりません。

第4章 人格と主体性は、令和時代の企業競争力そのものである
これからの時代、AIやテクノロジーによって知識や情報の価値は急速に均質化していきます。
・何を知っているか。
・どの技術を持っているか。
それだけでは差別化が難しくなるでしょう。
だからこそ最後に残るのは、
・どのような人格を持った人たちが集まり、
・どのような主体性を発揮しながら働いているか
という組織文化そのものです。
人格が高い人材が主体的に学び続ける組織。
失敗を学びへ変えられる組織。
知恵が世代を超えて循環する組織。
平成時代までに大きく成長した企業は体力もコネクションもあるため、簡単には潰れません。資本力も内部留保もあるため、従業員に高い給与を払い続けられます。
大企業は、「安定」という理由だけで人が集まります。
対して中小企業はどうなのでしょうか?
資本力で勝てない中小企業が、賃金だけで大企業に対抗するのはナンセンスです。
人手不足がまだ25年は続く日本の中で、人に選ばれる会社であることの優位性は、少し想像すればわかると思います。
そうした会社だけが、変化の激しい時代を生き残っていくのだと私は考えています。

第5章 教育の本当の目的
教育とは知識を増やすことではありません。
研修とはスキルを教えることでもありません。
本来の教育とは、人がより良く生きるための人格を育み、その人が主体的に人生を切り拓く力を養うことです。
企業もまた同じです。
利益を生み出すためだけに人を集めるのではなく、人が成長し、互いを高め合い、社会へ価値を還元するための場であるべきだと私は考えています。
人格が主体性を育てる。
主体性が学びを生む。
学びが成長を促す。
成長が次世代へ受け継がれる。
その循環こそが、組織の未来を創り出します。
そして、その循環を始めることができるのは、いつの時代も経営者自身なのです。


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