[主体性]第2回:誰でも主体性は持っている ― ただ、“発揮できる状態”になっていないだけ

序章 「最近の若手は主体性がない」と言う違和感
「最近の若手は指示待ちだ」
「自分で考えて動かない」
「主体性がなくなった」
こうした言葉は、昔から繰り返されています。おそらく、時代が変わっても完全には無くならないでしょう。
しかし、本当にそうなのでしょうか。
例えば私生活では、多くの人が非常に主体的に動いています。
趣味には没頭し、SNSでは積極的に発信し、推し活には時間もお金も使う。
欲しい物があれば、自分で調べ、比較し、判断しています。
つまり、“主体性そのもの”が無くなっているわけではありません。
にもかかわらず、職場に入った途端、「主体性がない」と言われ始める。この変化を、経営者や管理職は一度冷静に考える必要があります。
今回は、「主体性が消えたように見える理由」について掘り下げていきます。
第1章:人は本来、主体的に生きている
第2章:主体性が“消えたように見える”瞬間
第3章:「どうせ言っても無駄」が人を変えてしまう
第4章:主体性は「持つ・持たない」ではなく、「出せる・出せない」
第5章:主体性は、「表れ方」が違う

第1章 人は本来、主体的に生きている
子どもは本来、「やってみたい」「知りたい」「試したい」の連続で生きています。誰かに言われなくても行動し、興味を持てば集中し、自分なりに工夫する。これは特別な才能ではありません。
つまり主体性とは、後から与えられる能力ではなく、人が本来持っている自然な力のひとつです。
大人になった瞬間に、突然主体性だけが消えるわけではありません。それなのに、社会に出ると「主体性がない」として評価され始める。
これはどうしてなのでしょう。何が起きたのでしょうか?
私たちはいつの間にか、主体性を「一部の優秀な人だけが持つ特殊能力」のように扱っています。
しかし本来は違います。
主体性とは、誰か特別な人にだけ存在するものではなく、誰の中にもあるものです。
問題は、“持っているかどうか”という個人の話ではありません。
“発揮できる状態になっているかどうか”という環境の問題です。

第2章 主体性が“消えたように見える”瞬間
入社直後は積極的だった社員が、数年後にはほとんど発言しなくなる。
これは、多くの職場で見られる現象です。
最初は改善提案をしていた。
疑問を口にしていた。
工夫をしようとしていた。
しかし次第に、「言われたことだけをやる」状態へ変わっていきます。
その背景で、職場では様々な言葉が繰り返されています。
「前例に従え」
「前例がないからやるな」
「勝手なことをするな」
「余計なことを考えなくていい」
「責任取れるの?」
特に私は、「前例がないからやるな」、という言葉に強い違和感があります。なぜなら、どんな前例にも“最初の1回”があったからです。
前例がないなら、作ればいい。本来ならたったそれだけのことなのに、その挑戦が許されない。
さらに厄介なのは、否定されるのが“失敗”だけではないことです。保身に走る上司たちが、その責任を負うのを嫌い、挑戦そのものを否定し、失敗を恐れます。
その結果、部下たちは「考えて動こうとしたこと」自体を止め始めます。
こうして人は、「考えないほうが安全だ」と学習してしまうのです。
つまり主体性が無くなったのではありません。主体性を止める環境へ、人が適応していくのです。

第3章 「どうせ言っても無駄」が人を変えてしまう
主体性を弱める大きな要因のひとつが、“無力感”です。
意見を言っても変わらない。
改善提案が流される。
結局いつも同じ人だけが決める。
こうした経験が積み重なると、人は徐々に挑戦しなくなります。
心理学には、「学習性無力感」という考え方があります。
【行動しても結果が変わらない経験が続くと、人は挑戦そのものを止めてしまう】というものです。
これは能力不足ではありません。環境への適応反応です。
つまり、「主体性が低い」のではなく、「主体性を出しても意味がない」と学習している状態なのです。
さらに職場には、主体性を摘み取る言葉が存在します。私はこれを、「主体性を摘み取る6M」と呼んでいます。
- 無理
- 無駄
- 面倒
- 難しい
- 向いていない
- 儲からない
こうした言葉は、一見すると現実的なアドバイスにも見えます。しかし、挑戦する前に行動を止めてしまう「ネガティブな力」を持っています。
もちろん、全ての挑戦が成功するわけではありません。
それでも、「まず考えてみよう」「まずやってみよう」という芽まで摘み取ってしまえば、主体性は表に出なくなります。

第4章 主体性は「持つ・持たない」ではなく、「出せる・出せない」
職場ではよく、「あの人は主体性がある」「あの人は主体性がない」という言い方がされます。
しかし、この見方には注意が必要です。主体性を、“生まれ持った性格”のように固定化してしまうからです。
実際には、環境によって人の行動量は大きく変わります。
安心して話せる場では発言する人もいます。
任せられると力を発揮する人もいます。
否定されない時だけ提案できる人もいます。
つまり主体性とは、“存在しているかどうか”ではなく、“発揮できる状態かどうか”によって見え方が変わるのです。
だからこそ、「もっと頑張れ」「もっと主体的になれ」だけでは限界があります。
必要なのは、人が考え、話し、動こうと思える状態。
主体性を個人の問題だけで終わらせてしまうと、組織側が変わる機会を失います。

第5章 主体性は、「表れ方」が違う
「主体性がある人には、共通した“型”がある」
そう考えている人のなんと多いことか。
しかし実際には、主体性の表れ方は人によって異なります。
すぐ発言する人もいれば、慎重に考えてから動く人もいる。
静かに改善を続ける人もいれば、周囲を支える形で主体性を発揮する人もいます。
同じ主体性でも、表現方法は決して一つではありません。
人によって主体性の「表れ方」は異なるのです。
それにもかかわらず、「前に出る人だけ」を主体的だと捉えてしまうと、多くの従業員の主体性を見落としてしまいます。
主体性とは、“ある・ない”ではなく、“どう表れるか”にも違いがあるのです。
次回は、MBTI理論を参考にしながら、「主体性は性格ではなく、表れ方が違うだけ」という視点から、主体性の“見え方の違い”について掘り下げていきます。

個人の活性化を組織の活性化に繋げます。



