[エンゲージメント]第4回 受容と共感から始まる「主体的組織」へのリデザイン【覚悟】

日本企業のエンゲージメント(自発的貢献意欲)が、わずか6%という過酷な現実。
この壁を突破するために必要なのは、新しい評価制度や巧妙なインセンティブではありません。

それは、経営者自身の「覚悟」です。

今回は、組織の「三層構造」——すなわち、
・土台となる[関係の質]、
・その上の[思考・行動の質]、
・そして結果としての[結果の質]
という循環を動かすための具体的なスイッチの入れ方と、
管理を手放した経営者の前に広がる「新しい景色」についてお話しします。

目次

  1. 第1章 管理を手放す「経営者の勇気」
  2. 第2章 「関係の質」を耕す:まずは「聴く姿勢」を整えることから
  3. 第3章 「合意形成」が主体性のスイッチを入れる
  4. 第4章 エンゲージメントは「結果」として付いてくる

第1章 管理を手放す「経営者の勇気」

組織の土台である[関係の質]を整えるためには、経営者がこれまで握りしめてきた「管理」という手を緩める必要があります。

なぜ経営者は数字での管理をしたがるのでしょうか。

端的に言えば、それが「分かりやすい」からです。
「分かりやすい」定量的で平等な指標は、一見するとクリーンに見えます。

しかし、その分かりやすさを捨てて、従業員一人ひとりの背景やプロセスに寄り添う「定性的で公平な評価」を行うことは、多大な労力を要します。

それでも、数字による管理の手を緩めない限り、社員の主体性が芽生える余白はほとんど生まれません。

以前、別記事の[「任せる」と「放任」の狭間で:主体性を育む「関わり方」の選択肢]でも触れましたが、管理という重石を取り除いたとき、経営者は初めて、現場の細かな数値管理ではなく、会社経営を全体的に、俯瞰的に考えるという本来の役割に立ち戻ることができるのです。

 

第2章 「関係の質」を耕す:まずは「聴く姿勢」を整えることから

では、具体的にどうやって土台となる[関係の質]を耕せばよいのでしょうか。

それにはまず、経営者自身の「きく」姿勢を見直す必要があります。
日本語には3つの「きく」があります。

どこかの国の元総理大臣が、「聞く力」を連呼して、国民の声を聞き流していましたね。
経営者の「きく」はこの字ではダメなんです。

  • 「聞く」:受動的。意識せずとも音として聞こえてくる状態。
  • 「訊く」:質問。自分の欲しい答えを求めて、相手に問い質す状態。
  • 「聴く」:能動的。相手の言葉の裏にある意図や感情を理解しようと、意識を集中させて聴く状態。

心理的安全性を高めるための第一歩は、この「聴く」を実践することです。
明日から実践できる具体的なアクションの第一歩は、[相手の顔を見て話す]という極めてシンプルな所作です。

部下から報告を受ける際、パソコンの画面を見つめたまま「聞いて」はいませんか?

まずは作業の手を止め、椅子を相手の方へ向け、相手の目を見て「聴く姿勢」を整える。
この物理的な変化こそが、受容と共感を伝え、土台である「関係の質」を耕し始めます。

 

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第3章 「合意形成」が主体性のスイッチを入れる

安心感という土台ができたら、次に行うのは「納得感」の醸成です。

一方的な命令ではなく、対話を通じて組織としての[合意形成(コンセンサス)]を図ります。

合意形成とは、単なる多数決ではありません。

「多数決」とは、ともすれば「数の暴力」になってしまいます。
そうではなく、対話を通じて全員がプロセスに納得し、一定割合の納得感と、同時に全員が幾ばくかの不満を抱えながらも、一丸となって目標達成に立ち向かえる状態を作ることです。

上意下達ではなく、自分たちがどうありたいかを言語化する。人は、自分で納得して合意したことに対しては、強い当事者意識を発揮します。

これが[自己決定理論]です。
自己決定理論とは、心理学者のエドワード・デシ(Edward Deci)とリチャード・ライアン(Richard Ryan)によって提唱された、人間の動機付け(モチベーション)に関する本質的な理論です。

『人は、他人にやらされるのではなく、自分で決めて行動するときに最も高い成果と成長を発揮する』という心理学の理論です。
少々乱暴に言い換えれば、仕事をする上で重要なものとして「当事者意識」や「自己決定権」がある、という理論です。

「やらされている」を「自分たちで決めた」へ。

意識がシフトしたとき、外発的な刺激に頼らずとも自ら燃え続ける、本質的なエンゲージメントが駆動し始めます。

 

第4章 エンゲージメントは「結果」として付いてくる

改めて振り返りますが、日本企業のエンゲージメントはわずか6%です。

これは、組織に対して「熱意を持って主体的・意欲的に貢献しよう」とする社員が100人中6人しかいないという、危機的な状況を指しています。

どうしたら6%のエンゲージメントを、上げることができるのでしょうか。近年、「褒める」管理職が増えているとも聞きますが、実はそれでは足りません。

以前、財務局の管理職研修で「エンゲージメント強化」を担当させていただいた際にも、ワーク等で体験してもらった方法を始め様々ありますが、それについてはまた別の機会に詳しくお話ししましょう。

大切なのは、エンゲージメントは無理に高めようとして高まるものではないということです。
正しい土壌(関係の質)を整え、正しいプロセス(自律性)を歩んだ「結果」として、後から咲く花のようなものです。

数字という影を追うのをやめ、実体である「人間」に向き合う。その先にこそ、社員が輝き、組織が勝つために動き出す「主体的組織」の姿があります。

人が主役となる組織へのリデザイン。その一歩を、共に踏み出していきましょう。

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