[仕組み]第3回「やりがい」を仕組みでリデザインする:個人の目的と組織のベクトルを重ねる【意味】

シリーズ第1回では報酬という「仕組み」の不条理を、第2回では関係性を阻害する「壁」を取り払う手法をお伝えしてきました。
第1回:[仕組み × 主体性]第1回 「仕組み(みなし残業制度)」が、組織への信頼を根底から腐らせる ~【実体】
第2回:[仕組み]第2回 【関係】「上司選択」と「ニックネーム」:階層を溶かし、主体性を呼び覚ます
土壌を耕し、障害物を取り除いた次に必要なのは、そこに「何のために働くのか」という種をまき、意味を与える作業です。
今回は「やりがい」を精神論で終わらせず、仕組みによって「自走する内的エネルギー」へと昇華させるアプローチを考えます。
目次
- 1.「何のために働いているのか」という問いの消失
- 2.「1on1」を単なる業務報告会にしない仕組み
- 3.「感謝ボード」という仕組み:『褒めるより感謝』を可視化する
- 4.やりがいの先に「天職」という主体性が宿る
1.「何のために働いているのか」という問いの消失
「生活の糧を得る」ことは働く上での切実な動機です。
しかし、もし動機が「給与のみ」に極端に偏ってしまっている場合、組織への不信感が生じた際に、その繋がりは容易に揺らいでしまうリスクを孕んでいます。
報酬という土台を整えた上で、それ以外の「働く意味」を組織に見い出せているか。
かつての私自身もそうでしたが、組織によっては面談の機会が極めて限定的で、賞与時期に決まった評価を言い渡されるだけの「評価伝達」に終執してしまっているケースが見受けられます。
次期の目標設定こそあれど、中間での進捗確認や対話はなく、次に顔を合わせるのはまた半年後の査定時……という形式的な運用。
これでは、仕事の意義を見出す機会を仕組みそのものが損失してしまっていると言わざるを得ません。
「やらされ仕事」を「自分事」に変えるには、個人の人生の目的と、組織の存在意義を接続する「仕掛け」が不可欠です
2.「1on1」を単なる業務報告会にしない仕組み
その接続を担う仕組みの一つが「1on1」です。
しかし、これが単なる「上司への業務報告会」になってしまっては、対話の価値は失われます。
本来、目標管理制度(MBO)の本質は、部下に「キャリア観」「価値観」「夢(目標)」などを言語化してもらい、それを今の業務などに結びつけることにあります。
1on1は、この本質を機能させるための場です。ここで重要になるのが、上司側の「傾聴」というスキルです。
以前の記事:[エンゲージメント]第4回 受容と共感から始まる「主体的組織」へのリデザイン【覚悟】でも触れましたが、改めて「きく」の三つの違いを意識してください。
- 「聞く」:音として耳に入ってくる(受動的)
- 「聴く」:相手の心に耳を傾け、背景まで理解しようとする(能動的)
- 「訊く」:問いを投げかけ、相手の考えを深掘りする(探求的)
1on1では「聴く・訊く」を使い分け、徹底的に面談相手を主役と立てることが鉄則です。自分の意見は最後です。
声のトーンや表情といった「ノンバーバル(非言語)なサイン」を見逃さず、相手の状態に合わせて対応を変える柔軟さが求められます。
さらに重要なのは、相手の状態に合わせた「頻度の最適化」です。
主体性が低いフェーズの人には、数日に1回といった高頻度で寄り添い、安心感を醸成する。
逆に主体性が高い人には、数ヶ月に1回程度のスパンで、日常の報連相とは別に、中長期的な視点を確認する。
こうした「自分自身が主役である」という対話の積み重ねが、仕事に対する「納得感」の土台となります。

3.「感謝ボード」という仕組み:『褒めるより感謝』を可視化する
納得感を支えるもう一つの柱が、日々の「貢献の実感」です。
私は研修などでも、「褒めること」よりも「感謝すること」の大切さを伝えています。
「褒める」という行為は、受け取り手によっては上下関係のニュアンスを感じてしまうこともあり得ますが、「感謝」は「あなたの存在が助けになった」という対等な貢献の承認です。
これは自分の存在意義に直結し、強いやりがいを生みます。
これを可視化するために、私は「社内掲示板」を利用して、全員が見られる場所に感謝を書き出す「感謝ボード」をお勧めしています。
「自分の行動が誰にも届いていない」という感覚は、人のモチベーションを著しく損なわせます。
一方で、自分の行動が誰かの役に立っていることを仕組みとして実感できれば、それが外的エネルギーとなり、仕事に対するヤリガイに繋がります。
ただし、他人からの承認という外的エネルギーは、あくまで主体性を引き出すための「きっかけ」に過ぎません。
自分で自分を認める「内的エネルギー」で動けることこそが、真の主体性発揮に繋がるからです。
4.やりがいの先に「天職」という主体性が宿る
「やりがい」と「主体性」の関係を整理したのが、以下の図です。
「意欲(Will)」「能力(Can)」「他者貢献(Must)」の三つの輪が重なる中心、そこにあるのが「天職」であり、「主体性の発揮できる仕事」です。

1on1での対話を通じて、個人の想いと業務の接点を見出し、自分なりの「意味」を納得する。
そして感謝ボードなどの仕組みで「他者への貢献(Must)」を実感する。
これらのステップを通じて、まずは仕事に対するヤリガイ(意欲×貢献)を醸成します。
やりがいのある仕事の達成感は、自分の仕事に対する納得感に繋がります。
その「納得感」の積み重ねが、やがて他者からの承認が無くても行動できる「自走する内的エネルギー(主体性)」へと昇華していきます。
もちろん、こうした仕組みを機能させるには、役職の壁を超えて対等に対話できる「フラットな関係性(第2回参照)」という土壌が前提となります。
自社で働くことが社員一人ひとりの人生の目的にもかなっているという状態を、いかに仕組みで演出できるか。
この「仕掛け」こそが、真の主体的組織への鍵となります。

次回、最終回では、これら全ての要素(報酬・関係・意味)を統合し、激変する労働市場で勝ち残るための「主体的組織へのリデザイン」を総括します。

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