[エンゲージメント]第1回:パレートの法則にすら届かない、日本企業の絶望的な現実【警告】

多くの従業員がいる企業を率いる中で、ふと、このような違和感を抱くことはありませんか?

「なぜ、一部の社員ばかりが必死で、他はどこか他人事なのだろうか」
「本来、組織というのは、もっと全員が当事者意識を持って動くはずではないのか」

もし、経営者が一人で組織の全責任を背負い込み、動かない組織を無理やり動かしているような閉塞感を感じているとしたら、それは決してあなたのマネジメント能力の欠如だけが原因ではありません。
今、日本企業全体を蝕んでいる「構造的な病」が背景にあるのです。

本稿では、国際調査データに基づき、現代の日本企業が直面している「パレートの法則にすら届かない」という過酷な現実と、その真因について解説します。

目次

  1. 第1章 崩れ去った「働きアリの法則」の前提
  2. 第2章 データが突きつける「6%」という異常値
  3. 第3章 誰が日本企業の「熱量」を奪ったのか
  4. 第4章 危機を「伸び代」に変える第一歩

第1章 崩れ去った「働きアリの法則」の前提

組織運営において、多くの経営者が無意識に前提としている法則があります。イタリアの経済学者ヴィルフレド・パレートが提唱した「パレートの法則」、別名「働きアリの法則」「2:6:2の法則」です。

この法則では、集団は自然と「よく働く2割・普通に働く6割・サボる2割」の構成に分かれるとされています。

興味深いのは、有名な働きアリの実験結果です。
サボっている2割のアリを排除しても、残った8割の中で再び「2:6:2」の分化が起き、新たなサボるアリが現れるというものです。

このことから、多くの経営者は「どんな組織でも2割の主体的な社員がいれば、それに追従する6割と合わせて、なんとか会社は回っていくものだ」と、組織は健全に機能すると思い込んでいたのかもしれません。つまり、2割の「支え手」がいれば、組織は維持できるというのがこれまでの常識だったのです。

しかし、現代の日本企業において、この「2割の支え手」という前提そのものが、もはや適応されない状況に陥っています。

そのあたりを深掘りするためのキーワードが「エンゲージメント:Engagement」です。

XなどのSNSでもエンゲージメントという言葉はアナリティクスの一環として使われていますので、言葉そのものを聞いた言葉ある方も多いのではないでしょうか。
SNSアナリティクスの場合は、「投稿に対するユーザーの能動的な反応(アクション)の総数」といった意味で使われています。

またEngagementの直訳は、「約束」「契約」などと言われ、婚約の際のエンゲージリングのENGAGEも同じ語源です。

ビジネスの場では「愛社精神」「当事者意識」などの意味として使われることも多いですが、私は「自発的貢献意欲」という訳を多用しています。

“The involvement and enthusiasm of employees in their work and workplace.” (従業員が自らの仕事や職場に対して抱く、関与と熱意)

として定義付けられ、「自らの仕事や職場に対する『主体的な熱意』と『心理的な当事者意識(主人の精神)』」というニュアンスで使われています。

 

第2章 データが突きつける「6%」という異常値

米ギャラップ社が世界各国の企業を対象に行っている継続的な調査(State of the Global Workplace)の結果は、私たちの楽観的な思い込みを打ち砕きます。

この調査で測定されているのは「エンゲージメント」、つまり社員の「自発的貢献意欲」です。

2024年レポート(2023年データ)によると、日本企業のエンゲージメント率はわずか「6%」に留まっています。
調査対象となった145カ国の中で最下位という、極めて不名誉な記録を打ち立てています。

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この数字がいかに異常であるかは、他国と比較すると一目瞭然です。

世界平均が「23%」であるのに対し、米国は「33%」、インドにいたっては「34%」に達しています。経済成長が著しい近隣のアジア諸国と比較しても、日本の「6%」という数字は、世界最低水準の独走状態と言わざるを得ません。

これを先ほどの「働きアリの法則」に当てはめてみてください。

  • 【自発的貢献意欲のある従業員】:わずか6%(本来は20%)
  • 【熱意のない従業員】:71%
  • 【周囲の足を引っ張る従業員】:23%

本来、組織を牽引すべき2割の層が、わずか「6%」しか存在しないのです。

一方で、23%を占めるのは、大企業などで「濡れ落ち葉」と揶揄されることもある層です。
建設的な仕事をすることも、組織の成長に寄与することもなく、ただ給料だけをもらうために在籍している。アスファルトにへばりついて剥がれない雨上がりの落葉のように、剥がそうとしても剥がれない執着心を持って居座り続ける人々です。

わずか6%の少数派が、この23%の負の影響を必死に抑え込みながら、全社員を背負って進んでいる。

これではエンゲージメント高く働いている社員も、いつ「やっていられない!」となっても不思議ではありません。
事実、離職も辞めて欲しくないトップクラスの従業員こそ、相談もなく「いきなり」辞めませんか?

これが、パレートの法則にすら届かない、現代日本企業の現場で起きている「絶望的な現実」の正体です。

 

第3章 誰が日本企業の「熱量」を奪ったのか

なぜ、日本だけがここまで低くなってしまったのでしょうか。

この結果を見て、「自社の教育が悪いのではないか」と自責の念に駆られる経営者の方もいらっしゃいますが、この低迷は個別の企業の努力だけで抗えるものではありません。

最大の要因は、30年以上続く経済の低迷と、それに伴う実質賃金の伸び悩み、および将来に対する根強い不安です。

政治の混迷や社会的な不祥事が続く中で、「頑張っても報われない」「社会は良くならない」という閉塞感が、働く人々の心のエネルギーを根底から削り取ってしまったと考えられます。

またそうした経済的・時間的・心理的不安が人々の心の余裕を壊し、更に政治不参加→生活苦などの悪循環に陥っています。
政治無関心によって政治家が暴走している現代日本には、他者に目を向ける余裕が失われてしまっているのでしょうか。

このような社会背景がある中で、これまでの「当たり前」だった管理や命令という関わり方だけでは、社員の内側にある「自発的貢献意欲(エンゲージメント)」を呼び覚ますことは極めて困難になっています。経営者がいくら旗を振っても、社員の側にはそれを正面から受け止めるだけの「心の余白」が残されていないのです。

 

第4章 危機を「伸び代」に変える第一歩

しかし、この事実に打ちひしがれる必要はありません。

社会全体が沈み、多くの企業が「5〜6%」の呪縛に苦しんでいる今だからこそ、この現状を「構造的な危機」として正しく認識できた企業には、他社を圧倒するチャンスが残されています。

多くの企業が気づかぬうちに陥っているこの絶望的なバランスを、いかにして「自発的に動く組織」へとリデザインしていくか。その鍵は、社員の「主体性(OS)」をどのように定義し、覚醒させるかにかかっています。

ただし、焦って「社員のやる気を引き出そう」と、目の前に新たな「ニンジン」をぶら下げるような施策を打つのは、危険です。

馬を走らせるために鼻先に吊るしたニンジンは、実は超々短期的には効果があっても、中長期的には組織の主体性をさらに破壊してしまう危険性を孕んでいるからです。

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次回は、なぜ「ニンジン(報酬)」という外的な刺激が、かえって社員を「待ち」の姿勢にさせてしまうのか。経営を疲弊させる「モチベーションの罠」について深掘りしていきます。

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