[リーダーシップ]第5回:主体性の先にある「衝突」— 組織が本当のチームになる瞬間

ここまでの4回で、
1. 社長や管理職が「トッププレーヤー」を卒業すること
2. サーバント・リーダーとして環境を整えること
3. SL理論を活用しながら関わり方を変えること
4. 組織が生命体のように自走し始めること
についてお伝えしてきました。
しかし、ここで多くの経営者が戸惑う現象が起きます。
主体性を求めてきたはずなのに、主体性が育ち始めると組織運営が少しややこしくなるのです。
以前は言われた通りに動いていた人が、自分の意見を言うようになる。
以前は黙って従っていた人が、「私は違うと思います」と言い始める。
以前は社長の一言で決まっていたことが、簡単には決まらなくなる。
すると、
「前の方が楽だった」
「主体性なんて無い方が管理しやすい」
そんな気持ちが頭をよぎることもあるでしょう。
しかし、それは組織が悪くなったのではありません。むしろ、組織が健全な方向へ進み始めた証拠です。
主体性とは、単に自分で動くことではありません。
自分で考え、自分の意見を持ち、それを表現することでもあります。
だからこそ主体性が育てば育つほど、意見の違いが表面化します。そして、その先には必ず「衝突」が待っています。
今回は、その衝突について考えてみたいと思います。
第1章 主体性が育つほど、組織は静かではなくなる

「主体性がある組織を作りたい」
多くの経営者や管理職がそう願います。
しかし、主体性が本当に育った組織で起こることは、必ずしも穏やかな世界ではありません。
むしろ逆です。
主体性が自覚した人は、自分の考えを持ち始めます。
主体性が覚醒した人は、組織の課題に気付き始めます。
主体性を発揮した人は、自らの意見を口にし始めます。
その結果として起こるのが「衝突」です。
「私はこう思います」
「そのやり方は違うと思います
「もっと良い方法があるはずです」
こうした声が出始めたとき、多くのリーダーは不安になります。
しかし、それは組織が壊れ始めたサインではありません。
むしろ、組織が初めて生き始めた証拠なのです。
指示待ち組織では衝突は起きません。
なぜなら誰も何も考えていないからです。
考えていないから意見が出ない。
無い意見がぶつかることはありません。
考える人が増えた時、初めて組織は多様な意見を持つ生命体へと変化していきます。
第2章 対立を恐れる組織は、主体性を失う

ここで多くの経営者が陥る罠があります。
それは「対立を消そう」とすることです。
意見がぶつかる。
空気が悪くなる。
議論が長引く。
するとリーダーがこう言います。
「もういいから私が決める」
確かにその場は収まります。
しかし、その瞬間に組織は学習し、考えることを止めます。
主体性とは、「自分で考えること」もその重要な素養です。
第一歩と言っても良いレベルで、本当に重要な素養です。
自分で考える人が増えれば、意見が違うなんて当たり前です。
違いを消すことは、主体性を消すことと同義なのです。
問題は、対立ではありません。
問題は、リーダーに対立を扱う力がないことです。
健全な組織とは、対立のない組織ではなく、対立を成長エネルギーへ変換できる組織なのです。
第3章 「チームワーク」と「仲良し」は、似て非なるモノ

私は研修の現場で、「うちの会社はチームワークが良いんです」という言葉をよく耳にします。
しかし詳しく話を聞くと、
「誰も反対意見を言わない」
「波風を立てない」
「空気を読む」
という状態だったりします。
それはチームワークでしょうか。
私は違うと考えます。
本当のチームとは、
→多様な価値観を持った人たちが、
→みんなで協力し合い、
→時には意見の対立の中で、
→同じ目的地に向かう集団です。
意見が違うのは当然です。
・経験も違う。
・専門性も違う。
・見えている景色も違う。
・それでも共通の目的のために議論し、ぶつかり合い、最終的に一つの方向へ進む。
これがチームです。
チームとは決して仲良しクラブではありません。
むしろ、組織が成長する局面ほど、健全な摩擦は増えていきます。
この健全な摩擦を安心してできる環境、
お互いの意見を素直に言える場、
そうした場のことを「心理的安全性」と言います。
心理的安全性とは、ハーバード大学の「エイミー・エドモンドソン教授」が提唱し、Google社の「プロジェクトアリストテレス」で、高い成果を出すチームの最重要要因として、その有用性が確認されたチームの状態のことを言います。
曰く、
「発言・質問・失敗・提案をしても否定や報復を受けないと、メンバー全員が確信できる状態」
を言います。
重要なのは、相手を否定することではなく、目的に向かって意見を交わすことです。
第4章 リーダーの仕事は「答えを出す人」から「統合する人」へ

組織が自走し始めたとき、リーダーに求められる役割も変化します。
これまでは、
・答えを知っている人
・指示を出す人
・管理する人
でした。
しかし主体性が育った組織では、答えは現場のあちこちから生まれます。
するとリーダーに求められるのは、誰が正しいかを決めることではなく、どうすれば力を一つにできるかを考えることになります。
つまり、「管理者」から「統合者」への進化です。
それぞれが主体性を発揮すること自体は良いのですが、それがてんでバラバラに動いていては、組織は分裂します。
しかし共通の目的のもとで統合されれば、組織は個人の能力を超えた力を発揮します。
主体性とはゴールではありません。主体性は始まりです。
主体性が生まれ、
自走が始まり、
摩擦が生まれ、
そして統合へ向かう。
この終わりのない循環こそが、生きている組織の姿なのです。
組織づくりに完成はありません。だからこそ面白い!
そして、その先で経営者もチームリーダーも気付くのです。
「組織を育てているようで、実は自分自身が最も育てられていた」ということに。
従業員の一人ひとりが主体性を発揮し、組織が自走する。
自走した組織を総合して、成果に繋げる。
理想は高く、現実は大変かもしれませんが、5年後、10年後の会社のために、今、どんな決断をしますか?


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