[リーダーシップ]第1回:社長、いつまで「現場のトッププレーヤー」を続けるつもりですか?

1990年代前半。
世に『プレイングマネージャー』と呼ばれる存在が現れる様になりました。

管理職としてチームメンバーをマネージメントする仕事。
現場プレイヤーとしてお客様ともやり取りをして、会社の売り上げを直接作り出す仕事。
この二つの業務を兼任して行う管理職のことを言います。

私がサラリーマンをやっていた時代にもプレイングマネージャーはいました。が…

果たして、皆さんの会社にもプレイングマネージャーがいるのかもしれませんが、社長が望む業績に届いていますか?

第1章 「プレイングマネージャー」という幻想が、現場を疲弊させる

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多くの組織で、当たり前のように「プレイングマネージャー」という役割が求められています。しかし、私はこのスタイルに強い危機感を抱いています。

もともと、プレイングマネージャーという役割は、単なる「人手不足」を補うための緊急対応として生まれたものに過ぎません。それがいつの間にか「効率的なリーダー像」として美化され、定着してしまったのです。

しかし、プレイヤーとマネージャーを兼任することにの本質的な問題は、
≪必要な知識・スキルが全く異なる≫
という点にあります。

野球で言えば、エースピッチャーと監督ほど役割が違います。
確かに、野村克也氏や古田敦也氏など、実際にプレイングマネージャーとして兼任していた方もいらっしゃいます。

が、あの長嶋茂雄氏や王貞治氏というプレーヤーとしても監督としても超一流の活躍をした二人ですら、兼任はしていませんでした。
あのレジェンドたちですら選ばなかった茨の道を、なぜ現代のリーダーたちが歩まされているのでしょうか。

自分の数字を追いながらメンバーをサポートするなど、二兎を追う行為です。特に、管理職にこの無理な二足を履かせ続けている経営者の皆様、その決断が部下の功績を奪い、組織の未来を削り取っている可能性を、今一度直視していただきたいのです。

プレイヤーとしても、マネージャーとしても、どちらも半端になりかねませんし、結局チームの成績の補填のためにプレイヤーをやらざるを得ないマネージャーが多い、というのが一面の様です。

先ほどはプロ野球を例えで紹介しましたが、現在はプレイングマネージャーは存在しません。2015年の中日・谷重兼任監督以降、存在していません。

何故なら、役割の負荷が、もはや人間の処理能力を超えているからです。

第2章 「成功体験」を、アップデートし続ける勇気

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30人規模の会社の社長も、300人規模の組織を預かる管理職も、かつて現場で圧倒的な成果を出したからこそ、今の地位にいます。その「トッププレーヤー」としての成功体験は、確かに素晴らしい資産です。

しかし、ここで陥りやすい罠があります。かつて自分が現場で輝いた「勝ちパターン」にいつまでも囚われ、現場のハンドルを握り続けてしまうこと。これが「負の成功体験」へと変質し、組織の成長を止める足枷(あしかせ)になります。

現場を取り巻く環境は、テクノロジーも価値観も劇的に変化しています。環境が変わっているのに、自分自身をアップデート(最新の状態に更新)しない。

すると、ふと見渡せば、自分ひとりだけが取り残されてしまいます。
今の場所で止まっているということは、周囲が進化している以上、相対的に見れば「退化」していることになり兼ねないのです。

現場のトッププレーヤーとして走り続ける社長や上司は、無意識のうちに部下の試行錯誤を奪い取ってしまいます。
しかし、経営者に求められるのは目先の1点を取りに行く技術ではなく、10年後も勝ち続けるための「球団経営」の視点です。そのために、過去の自分を脱ぎ捨てる勇気が、今まさに問われています。

第3章 実務を知るからこそ振るえる、チームを伸ばす技術

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前回の記事『「自分がいなくても回る」を、経営者最高の報酬に変える』で、リーダーの役割は「庭師」であると触れました。現場を知り尽くしているからこそ、リーダーが磨くべきは自らのプレーではなく、チームという「土壌」を耕す努力です。

ここで私の一番のお勧めのリーダーシップ論です。
それは「在り方(存在)×関わり方(技術)」の統合と言っても良いと思います。


一つは在り方。
≪サーバント・リーダーシップ≫

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これはリーダーとしての「在り方(存在)」そのものです。支配するのではなく、部下が力を発揮できるよう奉仕する。部下にとって働き易い環境を用意し、自然に成功体験を積ませる達人です。
実務の機微を知るあなただからこそ、部下の苦しみに深く共感し、一人の「人」として心から信頼され、求められる存在になれるのです。


もう一つは関わり方。
≪SL理論(状況対応リーダーシップ)≫

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これは、相手の状態に合わせて変化させる「関わり方(技術)」です。 部下の成熟度やその日のコンディションを見極め、時には「具体的に指示」を出し、時には「相談」に乗り、習熟が進めば「全面的に委ねる」。
相手のフェーズ(段階)に合わせて、リーダー側の関わり方を柔軟に変容させていく高度な手法です。


この「在り方」と「関わり方」は、本来、切り離すことができない不可分なものです。
部下を支えようとする「在り方」があるからこそ、相手を深く観察する「関わり方」の精度が上がり、その変化が部下には「自分を正しく見てくれている」という安心感や信頼として伝わります。

この高度な統合は、自分の成果に追われるプレイングマネージャーの片手間では決して到達できません。現場を知るからこそ、あえて手を出さず、目を凝らし、耳を傾ける。この対極にある「静かな覚悟」が、部下の主体性を呼び覚ますのです。

第4章 部下育成は「会社の未来」そのもの

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リーダーが現場の最前線から一歩引くことは、決して楽をすることではありません。むしろ、自分自身が動くよりもずっと根気が必要で、頭を使う仕事です。しかし、その分、部下が自らの足で立ち、想像を超える成果を出した時の喜びは、何物にも代えがたく「愉しい」ものです。

部下の一人ひとりと向き合い、彼らが「人財」へと成長する環境を整える。これは、組織に≪レバレッジ≫を効かせるための、最も価値のある投資です。レバレッジとは、小さな力で大きな成果を生む仕組みのことで、リーダーが一歩引いて部下を伸ばすことで、組織全体の成果は何倍にも膨れ上がります。

部下育成とは、会社の10年後の未来を築くことに他なりません。

プレイヤーという目先の業績を捨て、部下の成長にレバレッジをかける道。
しかし、具体的にどうすれば「手を出したい欲求」を抑え、SL理論を現場に落とし込めるのか。その「水加減」は組織によって、そして部下によって千差万別です。

あなたが現場に居座り続けるトッププレーヤーとしてヒットを狙い続けるのことを卒業し、真のリーダーとして組織の未来をデザインし始める。
その具体的なプロセスについては、また別の機会にお話しできればと思います。

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