[自走する組織]第4回:「自分がいなくても回る」を、経営者最高の報酬に変える

「社長がいなくても回る会社を作りたい」
経営者向けのセミナーや書籍では、よく耳にする言葉です。

しかし、いざその言葉を自分事として考えてみると、どこか複雑な気持ちになる方も少なくないのではないでしょうか。

長い年月をかけて会社を育ててきたのは、自分自身です。

苦しい資金繰りもあった。
眠れない夜もあった。
社員が辞めてしまった日もあった。
それでも諦めずに会社を守り続けてきたからこそ、今があります。

だからこそ、「自分がいなくても回る会社」という言葉に対して、どこか寂しさを感じたり、自分の存在価値が薄れてしまうような不安を覚えたりするのも、決して不自然なことではありません。

しかし本当にそうなのでしょうか。

会社が社長一人の力に依存しなくなり、社員たちが自ら考え、自ら動き、自ら責任を担うようになること。

それは経営者として不要になることではなく、むしろ経営者としての仕事が実を結び始めた証ではないでしょうか。

「自分がいなくても回る」という状態を、経営者人生における最高の報酬へと変えていくために、これから必要になる視点について考えてみたいと思います。

第1章 誰もが持つ「承認欲求」という名のエネルギー

 心理学者のアブラハム・マズローが唱えた「欲求段階説」という有名な理論があります。

人間は「生存」や「安全」が確保され、組織や集団に属する「社会的欲求」が満たされると、次に、社会的な関係の中で『他者から認められたい、尊敬されたい』という承認欲求を抱くようになる、という考え方です。

下部の欲求が満たされることで初めて、次の段階に進むというピラミッドとして表現しています。

ここで言いたいのは、この欲求は
『決して特別なものではなく、人間が生来持っている極めて自然で尊いエネルギーだ』
ということです、

マズローの欲求段階説

特に、ここまで会社を成長させてきた社長にとって、この「認められたい」という想いは、幾多の逆境を跳ね返し、不眠不休で走り続けるための最強のエネルギーだったのではないでしょうか。

社長もこれまで、その承認欲求を正しく燃やし、己を鼓舞して頑張ってこられたのだと思います。

しかし、本シリーズ第1回
『「頼れる幹部」が育たない本当の理由:社長、あなたが有能すぎるからです』
でも触れた通り、社長が「唯一無二の正解者」であり続け、称賛を一手に浴び続ける状態は、裏を返せば組織の自走を阻む見えない足枷にもなり得ます。

これまで社長を支えてきたエネルギーの向け先を、これからは「自分自身の活躍」ではなく、「組織が自律的に動く美しさ」へと少しだけシフトしてみる。
そこから経営者としての新しいステージが動き出します。

 

第2章 「孤高 of ヒーロー」から「チーム・ヒーロー」の伴走者へ

子供番組のヒーローたちを思い出してください。
戦隊ヒーローも仮面ライダーも、ヒーローたちは仲間と共に、それぞれの個性を活かして巨大な敵に立ち向かいます。

社長も同じです。すべてを一人で背負い、全責任を抱えて戦い続ける「孤高のヒーロー」である必要なんて、どこにもないのです。

かつて自分が現場で味わった、あの魂が震えるような「愉しさ」。
それを、第2回
「楽しい」と「愉しい」の境界線:受動的な「楽(らく)」が組織を腐らせる
で説いたように、今度は仲間たちにも存分に体験してもらいましょう。

彼らという新しいヒーローたちが、時に悩み、時にぶつかり合いながらも、自らの意志で困難を乗り越えていく。
その誕生を喜び、その成長の背中を押し、その成果を共に祝う。

社長の役割は、自ら陣頭に立って剣を振るうことではなく、彼らが最も輝ける舞台を死守し、その逞しい背中を見届ける「伴走者」へと自らも成長することです。

泥にまみれ、成長していく仲間たちの後ろ姿を誰よりも近くで信じ抜くこと。
それこそが、会社を創り上げてきた経営者だけが味わえる、熱く、そして贅沢な「愉しみ」の本質なのだと私は考えます。

 

第3章 「開拓者」から「庭師」への転換

 これまでの社長の役割は、誰もいない荒野に斧を入れ、道を切り拓いていくフロンティアスピリッツに溢れた≪開拓者≫でした。

しかし、組織が一定の規模まで育ちつつある今、求められる役割は自ら鍬(くわ)を振るうことではなく、豊かな実りが生まれる土壌を整える≪庭師≫への転換です。

立場は「社長」のままでも、フェーズによって役割は変わって当然なのです。

庭師の仕事は、非常に繊細で奥深いものです。
第3回
「情報の非対称性」が、幹部を臆病者に変える
でお話しした「情報」という名の血液を隅々まで循環させ、組織風土という土壌を健やかに保つこと。
そして、その成長の度合いを見極めながら、時に「水」や「肥料」を適切に与えることが求められます。

ここで最も重要なのは、与え過ぎれば根腐れして枯れてしまう、という自然の摂理です。

良かれと思った過保護な指示は、かえって植物(社員)の生命力を奪い、自ら根を張る力を弱めてしまいます。

何を与え、何をあえて与えないか。
その絶妙な「水加減」と「信じて待つ忍耐」こそが、庭師となった社長に求められる、これまでにない高度な技術となるのです。

そしてそこに咲く花は、実に野性味に溢れ、鮮やかで目を奪われる姿ではないでしょうか。

 

第4章 そこは、社員全員が主役になれる「最高の居場所」

 「自分がいなくても、組織が勝手に、かつ愉しく回っている」

この事実は、決して寂しいことではありません。
経営者としての究極の≪作品≫が完成しつつある、輝かしい証なのです。

社長の有能さという巨大な影から抜け出し、社員一人ひとりが自らの人生のハンドルを握り、真剣に、一生懸命に走り始める場所。そこには、もはや指示待ちの「人材」はいません。

自らの仕事に対して自主的に動く「人材」たちが、さらなる高みである、自ら価値を創造する「主体的な人財」へと目覚めていく光景が広がっています。

MIZUKAraが理想と考える【社員全員が主役になれる最高の居場所】がそこにはある様に思います。

しかし、いざ「手放そう」と決意したとき、長年染み付いた「自ら動く習慣」や「情報の独占」という重い鎖を、どう具体的に解き放てば良いのでしょうか。
あなたの組織に最適な、主体性を呼び覚ます「肥料」の配合は、一体どのようなものでしょうか。

その答えは、既製品の教科書の中だけにあるわけではありません。
あなたの組織の「土壌」を深く観察し、共に汗をかくプロセスの中にこそ、そのヒントが隠されているのではないでしょうか。

その一歩をどう踏み出すべきか。それを共に考え、主体性を覚醒させていく旅に出る準備ができたとき、あなたの組織は真の意味で生まれ変わるのかもしれません。

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