[自走する組織]第3回:「情報の非対称性」が、幹部を臆病者に変える

昭和の時代、経営資源といえば「ヒト・モノ・カネ」の三つでした。
しかし、激動の令和を生き抜くためには、そこに【情報・時間】を加えた五つの資源を使いこなすことが不可欠です。

情報を止めるということは、経営資源という名の血液を凝固させ、組織の判断機能を麻痺させることに他なりません。

そして見落としてはいけないのが、5つの経営資源の内、「人」だけが意思を持ち、他の4つの資源を使いこなして売り上げに繋げます。

逆に「人」が正しくないとコンプライアンス違反を犯して、企業を窮地に陥れます。

今回は、「正しい情報があって、初めて人材は活躍できる」という話です。

第1章 正しい判断の土台は「正確な情報の分析」にある

 私が研修やセミナーの場で、経営者の方々に繰り返しお伝えしている言葉があります。

それは、
≪正しい判断は、より多くの正確な情報を分析して初めて行うことができる≫という、どこででも聴くような話です。

情報もないのに正しい判断ができる人などいませんし、いたとしてもそれはただの「まぐれ」か「奇跡」です。
経営をそんな不確かなものに委ねるわけにはいきません。

現代経営学の父、ピーター・ドラッカーも
『意思決定とは、事実についての知識を得るための、終わりのないプロセスである』
と述べています。つまり、判断の質は、その材料となる情報の質と量によって決定づけられるのです。

例えば、日本国民は政治に対する関心を、多くの人が持っていません。その結果、国政選挙ですら投票率は60%を切っています。

【政治=生活】であるのに、関心がないから知ろうとしない。情報を集めなくなります。

その結果、2026年2月の衆議院議員選挙では、自民党の金に任せた広告に騙されて、自民党が圧勝してしまいました。
その結果が、たった半年で現在の戦争に巻き込まれかねない状況になってしまいました。

それに対するデモも全国各地130カ所以上で起こっていますが、それすら知らない人が多いのです。

知らなければ正しい状況判断ができません。

組織内でも同じことです。
企業内の情報が、正しく、多く知る。これがあって初めてできるのが「正しい判断」というものです。

 

第2章 「情報のカーテン」が、優秀なリーダーを凍りつかせる

 なぜ、社長の目から見て、幹部たちの判断は「ズレ」たり「遅れ」たりするのでしょうか。 彼らが無能だからでしょうか?

いいえ、とんでもない!
彼らは優秀です。なぜなら、社長が信頼して選んだ仲間なのですから。
あなたは優秀ではない人を仲間に迎え入れた記憶がありますか?

多くの場合、原因は能力ではなく環境にあります。

専門用語ではこれを「情報の非対称性」と呼びますが、要は≪社長と社員の間で、持っている情報の量や質に圧倒的な格差がある≫という状態のことです。

役割が違うのですから、持っている情報が違うのは当たり前です。
ただそれでも可能な限りの情報共有はできるはずです。

京セラやDDI(現:KDDI)の発展、そしてJALの復活に尽力した、故・稲森和夫氏は、一社員にまで経営状況が分かるように損益計算書なども公開していた、と聞きます。

恰好を付けない、包み隠さないガラス張りの経営によって、社員一人ひとりが当事者意識を持って仕事に邁進できる環境をつくっていたということです。

しかし、この情報格差がある限りは、彼らは ≪目隠しをされたまま、時速100キロで車を走らせろ≫ と言われているような状況に置かれ続けます。

社長だけが見ている「銀行残高の推移」「大口顧客との生々しい交渉経緯」「業界を揺るがす不穏な予兆」。

これらは、経営というドライブにおける、フロントガラス越しの景色そのものです。
その景色(情報)を共有されず、足元のメーター(目の前の業務数値)だけを見て「もっとリスクを取れ」「経営者感覚を持て」と発破をかけられても、恐怖で足がすくみ、ブレーキを踏んでしまうのは人間として当然の反応です。

情報のカーテンが閉ざされている限り、彼らは失敗を恐れ、無難な「社長へのお伺い」という安全策を選び続けるしかありません。

問題なのはその先です。
ともすればこれは、その先に【保身】という企業が最も忌避すべき状態に繋がるリスクを呼び寄せてしまいます。

 

第3章 「蛇口」をひねり、情報の脈動を組織の末端へ

情報を独占することは、経営者にとって「自分なしでは何も決まらない」という状況を維持する、無意識の支配構造を生んでしまいます。
自走する組織へのリデザインは、社長がその情報の「蛇口」を、勇気を持ってひねることから始まります。

これまでは経営者の手元でせき止められていた情報の流れを、解き放つ。
それは、まるで心臓が力強く、指先の毛細血管にまで温かい血液を送り込むように、情報の脈動を組織の隅々にまで行き渡らせるプロセスです。

「人財」が自ら問いを立て、能動的に動き出すためのエネルギー源は、まさにこの「情報」という名の資源にあります。

蛇口をひねり、情報の生命線を繋ぎ直すこと。
それは特権を振りかざすことではなく、社員一人ひとりに、自らの意志で走り出すための『生きる力』を授ける行為に等しいのです。

とはいえ、全ての情報を無制限に垂れ流して良いという話ではありません。情報セキュリティ上の観点もあります。そこは確実な取捨選択が必要になります。

 相手は管理職なのか、指導者なのか、一般従業員なのか。
相手に応じて、ひねるべき蛇口を選び、判断に必要な情報を展開する。

これが経営者が行うべき「はじめの一歩」なのかもしれません。

 

第4章 同じ景色を見て、それぞれの視座で語り合う

 目隠しを外した彼らの目に映るのは、社長が日々対峙している、厳しくもドラマチックな現実です。 しかし、同じ情報を得たとしても、一人ひとりの経験や役割によって、そこから見える景色(視座)は異なります。

「営業の視点ではこう見える」「現場の若手にはこう映っている」 こうした多様な視座が交わされるからこそ、組織はリスクを事前に察知し、社長一人では思いもよらなかった新しい可能性を見出すことができるのです。

勿論、その意見を「屈託なく言える」環境が無くては、話は進みません。

聴いたことはありませんか?
Google社が2009年に行った「Project Aristoteles」において、「生産性の高いチームの条件」として必要な要素として、取り上げられたことで有名になった概念です。

心理的安全性とは、 目的に関して「この場で発言・質問・失敗・相談をしても、否定されたり不利益を受けたりしないと安心して感じられる状態」 のことを言います。

情報の蛇口を全開にし、同じ地図を持ってチーム全体で未来を語り合う。そこにはもう、暗闇で怯えながらハンドルを握るリーダーはいません。

社長が情報を共有し、組織の末端まで血液が通い出したとき、社員は自らの人生を『愉しく』走り始めます。これこそが、弊社(株式会社MIZUKAra)が提唱する【社員全員が輝く最高の居場所】の真の姿でもあります。

経営者が望むチームの姿は、案外、ちょっとしたことで実現できるのかもしれません。

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