[自走する組織]第1回:「頼れる幹部」が育たない本当の理由 / 社長、あなたが有能すぎるからです!

経営者をどの様に表現するかというと、例えばこんな言い方ができるのではないでしょうか。

  • 会社の存続に責任がある
  • 結論を持っていて、何をすべきかが見えている

ところが従業員は、役割の違いにより、そこに至ることはなかなかありません。
見えている経営者と、見えていない従業員。

ついつい「自分でやった方が早い」と考えてしまいませんか?

1. 組織が大きくなるほど、社長の「正解」が組織を縛る

「従業員が100人を超えても、結局は自分が現場の火消しに回っている」
「幹部たちは、私の顔色を伺ってからでないと一歩も動かない」
「私がいないと何も決まらないこの状況を、なんとかして変えたい」

今、こうした悩みを抱える経営者の方々と向き合う中で、一つの確信が生まれています。
それは、組織の成長が止まる原因の多くは、皮肉にも「社長の有能さ」にあるということです。

創業期から今日まで、会社を牽引してきたのは間違いなく社長であるあなたの判断力と突破力でした。

しかし、組織の規模が拡大していく過程で、その強みが「見えない天井」へと変わってしまいます。
社長が常に「正解」を出し続けてしまうことで、周囲の幹部やリーダーから考えるための「余白」を奪い、彼らが主体性を発揮する機会を組織的に摘み取ってしまっている可能性にお気づきですか?

会社は社長一人のモノではありません。
そこで働く社員一人ひとりにとって、人生の多くの時間を過ごす『大事な居場所』です。その居場所を自らの手で守り、育てたいという想いは、本来誰もが持っているはずのものです。

しかし、社長がすべての道筋を決めすぎてしまうと、その居場所はいつの間にか「社長の意思をトレースするだけの作業場」へと変質してしまうのです。

2. 「早い・正確・社長がやる」が、リーダーの思考を止める

企業規模が大きくなるにつれて、社長がすべての現場に答えを出すのは、時間的にも物理的にも不可能になります。

しかし、多くの有能な社長は、幹部たちが迷っているのを見ると、つい「こうすればいいじゃないか」と鮮やかな解決策を提示してしまいます。
そんな経験、ありませんか?

経営者としての経験値からすれば、それは確かに「最短ルート」かもしれません。
しかし社長自身は持っている、創業期からの「紆余曲折の経験」があるからこそ発動している最短ルートであることを忘れてはいけません。

社長が提示する最短ルートに従っている内に、幹部たちは自律的に思考することをやめて、楽で受動的な「たのしさ」に流されてしまい、悩み抜くための「思考力」は失われていきます。

自ら考え抜く「愉しみ(たのしみ)」を奪われたリーダーたちは、社長という唯一の動力源が動いている間だけ機能する存在に変わってしまいます。

社員にとっての居場所が、能動的に未来を創る場所から、社長が決めた方針をなぞるだけの場所へと変わってしまうのは、組織にとっては最大の損失だと感じませんか?

3. 「組織の自走」とは、社長が「負ける」という勇気を持つこと

 100名、300名と組織を率いる社長であっても、「自分がやったほうが早いし、失敗もない」という思考の罠に陥っていることが少なくありません。

しかし、社長が全速力で走り続け、すべての正解を持ち続けている限り、組織としての「自走」は始まりません。

これを打開するには、社長が手にしている「決定権」という名の余白を、あえて空けて差し出す覚悟が必要です。

次世代のリーダーを育てるために本当に必要なのは、単に権限を委譲することではなく、社長が自分よりも『精度の低い判断』や『遠回りのやり方』に対して【あえて受け入れる】という勇気です。

他の言い方として、「一歩引いて、あえて先を走らせてみる」と言い換えても良いでしょう。

自分が介入すれば100点で解決できる事案でも、あえて幹部がひねり出した80点の判断を『正解』として受け入れ、そのまま進ませてみる。
この[社長が自らの正しさを一時的に封印し、あえて一歩引くプロセス]こそが、次世代のリーダーに「経営の当事者」としての責任を移植する方法のひとつです。

社長が「受け入れる」ことで自走するための「余白」を譲って初めて、部下の中に「自分がこの居場所を守り、発展させなければならない」という真の主体性が芽生えるのです。

4. あなたが「唯一無二」でなくなることが、組織の完成である

 経営者の真の仕事は、自分が不在でも回る仕組みを創り上げることです。

それは、自分が「唯一無二のヒーロー」であることを卒業し、社内にたくさんのヒーローを誕生させるプロセスでもあります。

これは決して自分の存在意義を否定することではなく、むしろ自分が創り上げた組織を、社長個人の力に頼らずとも動き続ける「自律した生命体」へと進化させるための、誠実な決断です。

会社が社員一人ひとりにとっての『大事な居場所』であり続けるためには、彼らが【自らの意思で考え、行動し、時には失敗しながらも自らの手で成果を掴み取る手応え】が必要です。

この姿こそが主体性そのものなんですから!

社長の有能さという巨大な影で、社員の「思考の余白」を埋め尽くさないこと。
社長が一歩退いて、周囲が主体的に動き出すのを信じ切ったとき、組織は初めて社長の分身ではない、独自の生命力を持ち始めます。

社長であるあなたが会社にとって唯一無二の存在でなくなったとき、会社は本当の意味で、社長の手を離れ、社員全員が自律的に輝く『誇れる居場所』へと進化を遂げるのではないでしょうか。

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