「良かれと思って」が、部下の主体性を枯らしていないか?

第1回:指示待ち人間を作ったのは、他ならぬ「あなた」ではないか?

目次:「良かれと思って」が、部下の主体性を枯らしていないか?

なぜ、あなたのアドバイスは届かないのか?

部下から「これ、どうすればいいでしょうか?」と相談を受けたとき、あなたはどう応えているでしょうか。
多くの上司は、自らの経験に基づいた的確な正解を即座に提示してあげることが、上司としての優しさであり責任だと考えているのではないでしょうか。
しかし、その『良かれと思って』出したアドバイスが、皮肉にも部下の主体性を奪う入り口になっているかもしれません。

前回の記事(【指示待ち人間を作ったのは、他ならぬ「あなた」ではないか?】)では、指示を出す上司と待つ部下の間に生まれる[幸せな共依存関係]について触れました。
この関係性が一度定着してしまうと、部下は「自分で考えるよりも、上司に聞いたほうが早いし安全だ」という思考パターンを無意識に学習してしまいます。上司の善意が、結果として部下の思考のスイッチを切るきっかけを作ってしまう。
そんな日常の何気ないやり取りの中に、主体性が育つ貴重な機会を逃してしまう要因が潜んでいるのです。

まずは、その『親切心』がもたらす副作用に自覚的になることから、変革は始まります。

「教える上司」と「導く上司」を分けるもの

ここで重要になるのが、コミュニケーション手法の使い分けです。
一般的に「ティーチング(教えること)」と「コーチング(引き出すこと)」の対比で語られることが多いこの領域ですが、どちらが良い・悪いという二元論ではありません。大切なのは、その『目的』に合わせた選択です。

私も数々の社員研修などに登壇させていただいていますが、その場の、[私のマインドセットの基本はコーチング]です。コーチング的関わり方で、受講者と接するようにしています。
もちろん、新しい知識やスキルを効率的、かつ正確に伝達する場面ではティーチングが有効に働きます。しかし、相手の内側にある答えや気づきを引き出し、研修の真の目的である【行動変容】を促すのは、コーチング的な関わりです。

自走する組織を目指す上司に求められるのは、この『教える術』と『導く術』のバランスを状況に応じて意識的に使い分けることではないでしょうか。すべての事象に即座に正解を与えてしまう【教える上司】から、時にはあえて答えを脇に置き、部下の思考が深まるのをじっと待つ【導く上司】へ。

この関わり方のグラデーションを豊かにし、対話の質を変えていくことが、組織の風土を少しずつ、しかし確実に耕していくことになります。

「答えを教えない」という勇気が、個人のOSを駆動させる

私自身、人材開発・組織開発の現場で長年大切にしている信念があります。

研修などのOff-JTの場では、
[敢えて正解を言わず受講者に自由に考えてもらう時間(コーチング的関わり)]
を大切にしています。

教えられたものより自分で考えた答えの方が記憶に残るというのもそうですが、それが『考える力』、そして『考え抜く力』に繋がると信じているからです。安易に与えられた正解は、その場では便利でも、応用が利きません。自ら悩み、葛藤し、ひねり出した答えこそが、その人の血肉となります。

経済産業省が提唱する「人生100年時代の社会人基礎力」の中核にも、この【考え抜く力】が据えられています。VUCAと呼ばれる、経済学者ですら正解を持ち合わせていない不確実な現代において、この力こそが個人の能力を支える個人のOSを駆動させる原動力となります。

上司にとって、目の前で悩む部下に答えを教えないことは、時に『冷たさ』や『非効率』に感じられ、勇気を必要とするかもしれません。
しかし、その『自ら答えを導き出す時間』こそが、部下が自らの足で立ち上がるための唯一無二のトレーニングの場となるのです。

【考える時間を待つ】

これも部下育成に必要な資質ではないでしょうか。

「余白」をデザインすることが、組織の未来を創る

上司の新しい役割は、隅々まで完璧に描き込まれた設計図を渡すことではなく、部下が自ら描き込める『余白』をデザインすることへとシフトしています。

すべてを言葉で埋め尽くさず、あえて問いを投げかけ、部下の試行錯誤を辛抱強く見守る。
その余白の中で、部下は初めて「自分はどうしたいか」「何が最善か」という主体性の芽を伸ばすことができます。

それは一見すると最短距離ではないかもしれません。しかし、中長期的な視点で組織全体の自律性を高め、変化に強いチームを作る上では、避けて通れないプロセスです。

こうした小さな、しかし本質的な関わり方の変化が積み重なり、やがて組織全体の『自走する風土』へと繋がっていきます。

一人ひとりが『考え抜く力』を発揮し、互いに高め合える組織へ。
そのような組織のあり方を、理想論で終わらせるのではなく、皆様と共に現場で実現していく。そんな探求を、これからも続けていきたいと考えています。

【出典・参考】

個人の活性化を組織の活性化に繋げます。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA